「みんなで考えよう吹田の未来と現在(いま)」をメインテーマに、第33回吹田まちづくり・くらし・市政を考える研究集会が、11月23日に大和大学で開催され、306人が参加。市民のくらしと今後の吹田のまちづくりのあり方を大いに学び合い、語り合うものとなりました。
開会にあたって、実行委員長の鈴木英夫さん(吹田住民懇代表)は、「この研究集会は、33年前、吹田の住民と市職員と研究者が一緒になって『住みやすいまち吹田、福祉のまち吹田』をつくるために、みんなで考えようと箕面の勝尾寺に泊まりがけで集まったのが始まりでした。吹田では今年の春、維新政治から脱却することができました。傾聴をモットーとしている新しい市政に対し、私たちの意見を届けるとともに、市民による計画づくりをすすめることが求められています。これからの福祉の吹田、住み続けられるまち吹田にするために、今日の集会を有意義なものとしていきましょう」とよびかけました。
ご来賓を代表して、石川たえ府議会議員は「昨日のダブル選挙の結果は残念でしたが、今日は吹田のまちをよくしたいと願うこんなに多くの人が参加されていることに励まされます」と、ご挨拶されました。
また、後藤圭二市長、奥谷正実市議会議長、大和大学渉外広報本部長の松本伸司さんからメッセージを寄せていただきました。
記念講演は、「住み続けられるまち吹田へ」と題し、中山徹さん(奈良女子大学教授・大阪自治体問題研究所理事長)がお話されました。要旨は以下のとおりです。
市政研が始まって33回。始まった頃と今とでは、吹田のまちも住民もかなり変わってきている。吹田のまちの将来をどうするのか、それを吹田市民にどう知らせていくのか、吹田の住民運動の課題となっている。
まず第一は、吹田の雇用と福祉をどう両立させていけるかが課題である。雇用については、これまでは衛星都市の行政としては特段の対策を考えてこなかったが、大阪での雇用が深刻なほど減っているもとで、現在はそうはいかない。地方都市ですでに実施されているように雇用対策を考える必要がある。雇用を考えるなら福祉分野での雇用対策を考えるべき。なぜなら、吹田でも高齢者が増えるとともに、それを支える様々な需要が生じるが、現状でもまったく足りていない。そこで、行政が福祉施策をすすめ、そこに市民の雇用も確保していくことが必要だ。福祉の充実により雇用も確保していくことで、超高齢社会を乗り切っていける。
第二は、民主的な市民参加、つまり、市民の声が行政にしっかりと届く仕組みづくり、市民の声をどう受けとめ、どう反映していくのかが重要である。これは、トップの姿勢だけでは解決しない。これまでは、市役所本庁で様々な施策を展開してきたが、もっと細かな地域ごとに市民の声を受けとめ、その地域で様々な施策を展開していく、いわゆる「都市内分権」が必要だ。高齢者がどんどん地域で増えているもとで、一人一人の市民が知恵を持ち寄り、市政に関与していくことが可能になる。そういう仕組みを作り出した自治体が今後伸びていくだろう。
第三は、子育て施策の充実で少子化にどう歯止めをかけるかである。高齢者が増えるのは仕方がないことであるが、子どもが増えるかどうかというのは市の政策に左右される。保育・子育ての分野はこれまで公共的な団体が担ってきたが、企業に任せていくという流れがある。企業がいいとか悪いとかではなく、子どもに直接関わる分野を企業に委ねてよいのか。重要な教訓は、住吉市民病院の廃止から汲み取ることができる。病院の廃止にあたっては、産科・小児科をふくめ地域医療を低下させないことを附帯決議としたところ、実際には民間医療機関を誘致することが困難となっている。民間委託・民営化を考えるにあたっては、事業主体がどこかというよりも、どういう中身なのかが重要であり、中身を軸に議論していくことだ。特に、保護者の所得格差が子どもに引き継がれていくことを断ち切っていくことができるのは公的な保育・教育であると考える。
第四は、防災のまちづくりをどうやってすすめるのかである。吹田でもいつ災害が起こってもおかしくない。安心してくらせることが全ての大前提であり、重要な課題である。
つづいて基調報告では、自治体にも住民生活にも大きく関わる国の動きを明らかにしたうえで、特に人口減少対策を地方自治体に競わせる「地方創生」が「人口の大幅な減少を前提として公共サービスを広域化し、市町村が自前ですべての住民サービスを提供しなくなるという住民生活を脅かしかねないものであるとともに、地方における安定した雇用の創出や若い世代の結婚・出産・子育ての支援など、住民要求の前進に活用できるものでもある」と指摘。新しい市政が、「なんでも民営化」路線からの転換を明らかにしたこと、前の市政が描いた「より多くの『人・物・金・情報』が集まる元気なまち」に対して、新しい市政は、「50年、100年先を見越した『仕掛け』を施し、豊かな暮らしを支える高質で品格あるまちづくりを進めてまいります。」と表明したことを、「経済優先でなく、人々のくらし優先のまちづくりをめざしている」と評価。さらに、市民が「福祉のまち」「子育てのまち」「医療のまち」「安心・安全なまち」を将来像として願っているもとで、新しい市政が「『福祉と医療』、『教育、文化、スポーツ』、『高質で安全なまち』、そして『市民力、地域力』は、本市のブランドであり、誇りです。これらの吹田ブランドをさらに強化したい」と表明していることを紹介し、市民の願いと重なり合うものとなっていると評価し、「吹田の未来と現在(いま)」を、みなさんとごいっしょに考えたいと提案しました。
午後からは、「防災に強いまち・みんなに優しいまちづくり」「子育ての喜びをともに」「住民の視点から期待する吹田の産業を考える」「介護保険制度は今どうなってるの」「障がい者が安心して住み続けられるまちづくり」「貧困問題でネットワークづくりを」の6つのテーマ別の分科会に分かれ、熱心な討論が行われました。