2019年11月23日、大和大学において第37回吹田まちづくり・くらし・市政を考える研究集会が開催され、383人の住民と市職員、研究者が一堂に会して、住みよいまちづくりに向けて学びあい、語りあいました。
実行委員会を代表して基調提案を行った岩根良さん(吹田自治都市研究所主任研究員)は「吹田市は全国的にも稀な好循環自治体であるというが、本当に好循環といえるのか。好循環自治体を示す吹田のまちの特徴、強みとして、人口の増加、事業所開業率の高さ、市民満足度の向上。活発な市民活動などが挙げられている。それぞれ統計から探ってみたい」と切り出しました。
「全国的に特異な人口増の主な要因は転入超過にある。しかし、191町丁のうち107町丁で増加しているものの80町丁では減少しており、吹田全体で一様に人口増というわけではない。人口増は、いずれも大規模事業所跡地や社宅跡地へのマンション開発、公営住宅の建て替え・高層化と余剰地へのマンション開発が行われた地域。特定の地域に人口が集中することにより、住環境や交通、教育や公共施設、地域コミュニティなどの課題が生まれる。一方で、住宅の供給過剰は、高齢化の進行、近い将来の人口減少で空き家問題に拍車をかけるおそれがある。」と人口増加による問題点を指摘。
次に地域経済に目を向け「事業所開業率は確かに2014年〜2016年をみても6.5%(全国平均5.6%)と高いものの、廃業率は8・9%と開業率を上回っている。地域経済循環に果たす役割からしても、卸売業とともに医療・福祉・教育などの公共サービス部門の動向が重要であること、事業所数の84,1%が従業員20人以下の中小事業者であり、非正規雇用も増大している」ことを明らかにしました。
そして市民満足度についても「確かに4年前の調査と比べて満足度は向上しているが、満足度の低い項目は4年前と変わらず、保育サービス、子育て相談、家庭での災害対策、情報発信などの吹田市の取り組みへの不満は高く、固定化している。重要度は高いが満足度が低い(差が大きい)のは学校教育や地球温暖化防止対策、生活を支える社会保障などである」ことを明らかにしました。
最後に、「活発な市民活動は本市の強みというが、住民による地域自治活動は、担い手不足、役員のなり手不足による活動の停滞・マンネリ化などが指摘されており、自治会の加入率も年々低下、地域によっては高齢クラブが解散、見守り隊も中止などの事態も起きている。このようなもとで、総合計画の地域別計画が策定されず、地域担当職員の廃止や地域協議会の検討の中止でよいのか。住民自治が市政と地域のすみずみに循環してこそ、好循環自治体といえるのではないか」と問題提起されました。
実行委員会は、さらに市内各地を9月1日に現地見学したウォッチングSUITAを報告。南吹田駅前、北千里小跡地、佐井寺西土地区画整理、健都などで住宅開発がさらにすすむ状況を実感しました。
これを受けたフォーラムでは、壇上に上がった12人の市民や市職員がそれぞれ、市政やまちづくり、くらしの改善に寄せる願いや提案を発表しました。
記念講演では、公立保育所の民営化が争点となった大山崎町で、4党相乗りの現職町長に新人候補が勝利した経験が語られ、住民自治の力に確信が広がりました。
午後からも、7つの分科会に分かれて、それぞれ熱心な討論が行われました。