吹田市は、長年にわたり「福祉の吹田」「子育てするなら吹田」といわれるような行政水準を誇ってきました。それは、住みよいまちを願う住民の運動と、それをしっかりと受けとめる行政と市議会によって実現されてきたものです。
ところが、2011年に誕生した維新市政は、他市に比べて職員数が多い行政分野については「他市でも民間委託ができている」「公立でなくてもできる」と、「アウトソーシング推進計画」を策定し、総合福祉会館の生活介護事業の民間委託、体育館への指定管理者制度導入、図書館の窓口業務委託、保育所の一部民営化、学校給食の民間委託などのアウトソーシングを進めました。
維新市政に代わった後藤市政のもとでも、残念ながらアウトソーシング推進には歯止めがかからず、新たに学童保育の民間委託がすすめられ、地域保健福祉センターも廃止されました。さらに、民間事業者に委託して実施された「業務量調査・分析」結果が、アウトソーシングの新たな手法として持ち込まれています。
公共サービスは、その時々の時代における社会的なニーズに対して行政がただちに対応できないことから、教育、医療、福祉など様々な分野において、国や地方自治体のみならず、学校法人・医療法人・社会福祉法人など幅広い民間事業者によって担われてきました。官民が力を合わせて住民のくらしを守り、支えてきたわけです。
社会的なニーズに応えるためではなく、人件費を削減することや、行政サービスを「市場化」して企業の利潤追求につなげるため、「民間でできることは民間で」などのかけ声で、ことさらにアウトソーシングをすすめるのは、住民の安心や安全を脅かすことにしかなりません。
ただ、公共サービスも、事業によっては民間事業者や地域団体に委ねるのがふさわしい場合が考えられます。どのような場合に民間事業者や地域団体に委ねた方がよいか、市民のくらしの実態や要求を一番把握している現場の職員の意見を聞いて、慎重に検討することが必要です。経費や効率、他市比較だけでアウトソーシングすべきではありません。アウトソーシングを実施すれば、たちまち、多くの非正規職員が雇い止めされ、その生活を脅かすことになるとともに、非正規職員とはいえ長年にわたって培ってきた知識や経験・技能を放り出すわけですから、市民サービスの低下につながることも明らかです。
これまで吹田市では、他市ですすめられてきた業務についても直営を守ってきました。それは、民間事業者の方が安上がりであっても、行政の公平性・中立性・総合性・継続性を重視し、市民生活を守る公的責任を果たしてきました。「府内特例市でやっているから」「公立でなくてもできる」というだけでアウトソーシングをすすめれば、取り返しのつかないことになってしまいます。
いったん移管を受けた事業者が経営不振のために事業が続けられなくなったり、他の部門との連携ができなくなり利用者の利便性が低下するといったことが考えられます。
また、直営であれば、利用者側の声は直接反映され、改善することが可能ですが、民間事業者の場合にはそれぞれの事業運営の方針に口出しすることは困難です。利用者である市民がサービスを受ける権利を主張することもできなくなります。民主的な行政運営や住民の権利保障という観点からも、行政が直接サービスを提供することは重要なのです。
これからも、民間事業者や地域団体のみなさんと力を合わせて、住民の安心・安全を守る公共サービスを。