政府は2019年6月21日に「成長戦略実行計画案」「成長戦略フォローアップ案」「骨太方針2019」を閣議決定し、AI、IoT、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、ビッグデータの活用などを、産業界はもちろんのこと、国や自治体業務にも全面的に導入することを明記しています。
また総務省の「自治体戦略2040構想研究会」報告、「地方自治体における業務プロセス・システムの標準化及びAI・ロボティクスの活用に関する研究会」(スマート自治体研究会)報告でも、自治体業務への全面的な活用について示されています。
このようなもとで、全国のいくつかの自治体においては、すでに具体的にAIなどの導入や実証実験がすすめられています。
これらの新技術は、科学技術開発の到達点であり、利便性をはじめ住民サービスの向上につながるとともに、職員にとっても業務負担の軽減につながる可能性があります。
しかし、検討が不十分なまま、職場の人員不足を補うことになるなどの名目のみで安易に導入することは適当ではありません。AI・RPAなどの新技術の活用は、誤りが起こる可能性を否定できません。経験と知識を兼ね備えた自治体職員ならば、その誤りを正すこともできます。新技術ありきで自治体業務を行えば、自治体職員の経験と知識が蓄積されず、スキルが低下し、誤りが起こっても見過ごされることにもなりかねません。さらなる人員削減の口実にもされかねません。
また、AI・RPAの導入によって、市の独自施策ができなくなるなど、住民サービスが低下するようなことはあってはなりません。AI・RPAの導入により懸念されることは、どこの自治体でも使えるAI・RPAに合わせて業務を見直すこと(業務の平準化)によって、自治体そのものが変質してしまうことです。
自治体の役割は住民の基本的人権を守り、福祉の増進に努めることです。AI・RPAの活用により、職員の業務負担が軽減されるなら、人員削減をすすめるのではなく、対人サービスの充実や、これまではできなかった業務にも取り組むなど、住民福祉の向上に向けた自治体施策の充実こそ行うべきです。
こうしたことをふまえて、自治体業務へのAI・IoT・RPAなど新技術の導入への対応についての考え方を提案するものです。
1.新技術の導入によって、業務の平準化など、住民サービスが低下しないこと。
2.新技術の導入によって、人員削減をすすめるのではなく、住民福祉の向上に向けた施策の充実を行うこと。
3.新技術の導入にあたっては、当該職場で十分な検討を行うこと。