現在、吹田市で市民課業務を委託する計画があることが明らかになっています。吹田市議会2月定例会にその予算案を計上する準備が進められています。
市民課といえば、「ゆりかごから墓場まで」といわれる市役所の顔であり、出生や死亡、婚姻、引越しの届出や、戸籍謄本や住民票などの交付申請で、多くの方が来庁されています。戸籍や住民記録、印鑑登録など、多くの大切な個人情報を扱う部署です。
吹田市が最初に委託しようとしているのが郵送業務です。遠方にお住まいで本籍が吹田にある方から戸籍や戸籍附票を請求されたり、仕事で来庁が困難な方から住民票などの交付依頼もありますが、消費者金融などから債務者の住民票を請求される場合や本人や民間企業から依頼を受けた弁護士・司法書士からの証明発行依頼、警察、税務署など公的機関からの請求依頼などもあります。借金や犯罪など多岐にわたる秘匿性の高い個人情報が集中する業務であり、慎重な確認と厳格な個人情報保護が求められています。借金や犯罪の嫌疑など、人には知られたくないセンシティブな情報が民間業者に筒抜けになってもよいのでしょうか。
委託されると、市民サービスはよくなるのでしょうか?これまでとは違って、民間事業者のスタッフが窓口に立ち、証明書の発行を行うことになります。しかし、届を受け付けたり、証明書を交付するだけが仕事ではありません。
吹田市に引っ越してきたばかりの市民に対し、転入届の受理をするだけでなく、その方に必要な届や他部署を案内するのも市民課職員の役割です。市役所の業務を熟知しているからこそ。スムーズな連携をすることにより新生活のスタートのお手伝いをすることができるのです。
委託するメリットとして、スタッフが増えるので「待ち時間が短くなる」と言われています。とんでもありません。窓口のスタッフがどんなに増えても、受け付けた書類を審査する市の職員が減らされてしまえば、待ち時間は長くなります。また、委託スタッフと市の職員は業務もスペースも厳格に切り分けられるため、非効率極まりありません。
委託後、待ち時間が長くなり、その対応として委託事業者が、退職した市職員を雇用し、待ち時間を短くしたという話もあります。「民間の力を活用して」という委託導入のうたい文句がまやかしであることの証です。
後藤市長も、民間活用についての答弁で、「市役所の対面職場での業務は直接市民の皆様に接し、寄り添いつつ、分野横断的な問題についても丁寧に御対応するという、基礎自治体の使命においてとても大切な業務です」(平成30年5月定例会)と述べています。そのとおりです。
いま、その答弁をくつがえすような計画がすすんでいることについて、心配する声や反対の声も寄せられています。
市役所の役割、危険にさらされる個人情報、吹田市で歯止めなくすすむアウトソーシング。
みなさんは、どのように思われますか?