吹田市立児童館条例を改正し、すべての児童館で中学生までの受入れや不登校児の受入れ、学習支援、親や子の相談など機能を強化することと、老朽化した高城児童会館を(仮称)日の出町児童センターとして移転・建て替えし、高校生までの受け入れと指定管理者による運営を行うための予算案が2月定例会で提案されます。
19日、吹田住民懇代表の平岡つや子さん、・元児童館館長の松木正さん、五中校区子どもを守る連絡会の藤嶋具治さんの呼びかけで「児童館のあり方を考える懇談会」が開催されました。市民や住民団体、労働組合などから57人が参加しました。
議会提案にさきがけて、昨年12月にパブリックコメントが行われましたが、指定管理者制度導入などの唐突な提案に地元自治会や公民館利用者、関係者からは戸惑いや疑問の声が広がっており、「市民の声でよりよい児童館にしていこう」と開催されたものです。
主催者を代表して、平岡さんより「高城児童会館の移転・建て替えに期待したが、突然の指定管理者制度導入と聞いてびっくりしている。親子をとりまく状況も多様化、複雑化しており、急がれる課題がたくさんある。今後の児童館の在り方について、共に考えていく場にしたい」と開催の趣旨が語られました。
元児童館長の松木さんからは、「吹田市の児童館は12館あり、地域に身近なところで子どもと親とつながる優れた施設。これまでも職員の努力で不登校児童への対応や相談業務、学習支援など子どもたちにしっかり寄り添いながらやってきた。
しかし、受入れ対象を中学生、高校生までとするのは、スペースも部屋数も少なく、また同じ体制だと多様なことに対応できるか不安がある。
指定管理者制度については地域や運営委員会、児童厚生員に事前の説明もなく、すすめられようとしている。16日に公表されたパブコメに対する市の考えは、安定的な館運営をするためとしているが、それならば直営で行うべきだ。今まで子どもたちや地域との信頼関係を培ってきたのが職員だ。あまりに拙速で乱暴。もっと議論を重ねて丁寧にすすめることが必要ではないか。吹田の子どもたちを市民みんなで見守っていく、そういう議論をすすめよう」とよびかけられました。
五中校区の子どもを守る会の藤嶋さんからは、(仮称)日の出町児童センターの指定管理者制度の導入に対して、地域の反応や取り組みが報告されました。「高城児童会館は吹田の児童館初期にオープンし、厚生員さんや運営委員さんの努力で充実した施設運営をされている。老朽化による建て替えで、これまでの2.7倍の広さになると期待も大きい。しかし、運営を指定管理者制度にすることや日曜日を閉めることについて、これまでどおりの運営と日曜開館などを求める署名にも取り組んでいる。地域の声を届けたい」と決意が語られました。
懇談会に参加した、吹三地区連合自治会の中野会長からは、「2021年4月に高城児童会館の移転建て替えに広場の設置を求める要望書を提出した。建て替えが決まり、昨年12月5日に突然、議会提案する予定であると、第1回説明会が開かれた。すでにパブリックコメントも始まっていた。説明では、新たな施設では、『すべての子どもとその家族に寄り添い続け、成長を育む児童館』として、民間事業者が持つ専門的な知識・経験の活用や職員体制の充実を図る観点から、指定管理者制度を導入する、という説明で、みんな驚いた。
参加者からは、『今の児童厚生員が継続して勤務するものと考えていた』『パブコメもはじまっているのに、高城児童会館の運営委員にも説明がなかった』などと紛糾し、2回目の説明会を行うことになった。
2回目説明会も同様の説明で「もうけ優先、コストカット、職員の数、専門職員の配置不足、新事業の看板倒れ」などの厳しい意見が出され、3回目の説明会ではパブコメ結果や京都の視察報告がされたが、地元は納得していない。
2月5日に移転建て替え場所にあたる東城前自治会が市に要望書を提出、後押しする形で連合自治会の総意で市長と議長に要望書を提出した」と、地元自治会の取り組みが紹介されました。
また、児童館運営委員会でも突然の提案に不満や不安の声が出ており、「子育てで大切なのは、地域との連携。子どもたちと触れ合う厚生員は、市の職員である必要がある。成り手がないからと指定管理者に委ねるのは安直すぎる。職員の働きやすさを向上し、魅力ある児童館をつくってほしい」など意見が寄せられています。
会場からの発言では、児童館の現状や保育、学童保育など子どもを取りまく実態や不登校児の親の思い、民間だのみでアウトソーシングをすすめる市政の現状、結果ありきではなく、現場の実態を把握し、ビジョンを示したうえで提案すべき、などの意見が出されました。
最後に、懇談会のまとめとして次の5点が提案されました。
@児童館は市内6ブロックに2館ずつ整備されており子どもの居場所、子育て支援の場、そして子どもの権利を保障する場としての役割をさらに充実させることが求められている。
A吹三連合自治会の「(仮称)日の出町児童センターで、高校生まで受入れ、機能を充実させるのであれば、学校との連携や運営委員会等をはじめとする地域との連携が不可欠であり、市の責任で運営すべき」という要望は参加者共通の思いである。
B全館ですすめる機能強化は、施設や備品整備も必要で、条例をつくったから実施できるものではない。結論ありきではなく、地域の実情も踏まえ、館の運営委員会などと丁寧に議論していくことが大事である。
C2月市議会に条例改正案と予算案が提案されたもとで、きょうの議論やそれぞれの思いを地元をはじめ、議員のみなさんに伝え、地域の声の反映と慎重な審議をお願いする。
D今後、運営について具体的な検討がされる。子ども第一に児童館の充実に向けて、利用者や地元住民で、緩やかなネットワークをつくり、取り組みをすすめていきたい。
以上の5点を参加者で確認し、懇談会を終えました。