吹田市職員労働組合現業評議会及び吹田市職員労働組合現業合同支部の団体交渉申し入れに対して、吹田市が不当労働行為を行ったことを認め、誠実に団体交渉に応じることなどを内容とする中央労働委員会の救済命令を取り消すよう求めた訴訟の控訴審において、さる平成27年5月14日、東京高等裁判所は吹田市の控訴を棄却し、労働組合の主張を全面的に認める判決を言い渡しました。
控訴期限が迫る5月27日、吹田市は「判決内容を精査した結果、上告はせず、判決を受け入れる」ことを発表しました。これにより高裁判決が確定し、吹田市は中央労働委員会の救済命令にしたがうことが求められます。
第一に評価できる点として、中央労働委員会の救済命令では、吹田市職員労働組合現業評議会と吹田市職員労働組合現業合同支部の不当労働行為申立適格が明確に認められています。現業職から構成される現業評議会について、「地公法上の職員団体である市職労の補助組織にすぎない」などとして労働組合と認めないというのが吹田市の主張でしたが、中央労働委員会はこれを否定し、現業評議会が労働組合であることを認めました。また、一般職と現業職から構成される「混合組合」といわれる現業合同支部についても、吹田市は「職員団体か労働組合か、どちらかしかありえない」として職員団体である以上は労働組合と認めないというのが吹田市の主張でしたが、中央労働委員会はこれも否定し、たとえ少数であっても現業職を組合員とする限り、労働組合としての権利が保障されることを認めました。地公法を口実にして労働組合の権利を否定してきた維新政治に対する厳しい審判となりました。
次に、中央労働委員会の救済命令は、権限と責任を有する者が出席して団体交渉に応じなければ誠実に交渉に応じたことにはならないとしています。教育委員会が団体交渉に応じているのだから、市長が団体交渉に応じなくてもよいと吹田市は主張しましたが、交渉経過からみれば教育委員会には実質的な交渉権限が付与されていたとは認められず、権限を有する者が団体交渉に出席しなかったことを不当労働行為にあたると判断したのです。これまで、職員すべてに関わる賃金についての交渉で総務部長が出席を拒否することがありましたが、論外ともいう判断です。
第三に、中央労働委員会の救済命令は、「管理運営事項といえども労働条件に関連する場合には、当該労働条件について団体交渉事項となる」ことを改めて確認しました。したがって、欠員補充自体は当局自身の責任で決定し行うべき管理運営事項であっても、欠員が補充されないことにより生じる安全衛生上の問題や労働密度の強化といった労働条件に関する事項については、団体交渉の対象であり、団体交渉に応じなければならないということになります。
先だって行われた吹田市長選挙において市民サービス削減、市民負担増をすすめてきた「維新」市政に対し、市民から退場の審判が下されたことに加え、職員労働組合攻撃を行ってきたことについて、中央労働委員会の救済命令と東京地方裁判所の請求棄却に続く今回の敗訴によって、「維新」市政の誤りは一層明らかになりました。
この不当労働行為救済命令取消訴訟は、労働組合への攻撃の一端として行われてきました。今回、吹田市が高裁判決を真摯に受けとめ、上告を断念したことは、維新市政のもとでのこれまでの誤りを認め、労使関係を正常化する立場に立つに至ったものと受けとめます。「対話と信頼による政治の実現」を掲げ当選した新市長のもとで、「あたりまえ」のこととはいえ、労使関係の正常化に向けた大きな第一歩を踏み出したものといえます。
私たちも、吹田市当局の上告断念をふまえ、労使関係の正常化に向けて努力するとともに、市民に寄り添う市政を実現し、市政への信頼回復のために、奮闘していく決意を表明します。
これまで約5年半にわたり、粘り強い闘いをすすめてきた現業の仲間とともに喜びを分かち合いたいと思います。そして、闘いを支えていただいた弁護団のみなさん、大阪自治労連をはじめご支援いただいた労働組合や地域のみなさんに感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
2015年 5月27日