トップダウンの市政運営が目立つ吹田市で、今すすめられようとしているのが、「全事務事業ゼロクリア大作戦」。これは、「事業開始から20年以上経過している事務事業については、すべて廃止」、事業開始が平成の事業についてもゼロベースから見直ししようとする3ヵ年の計画です。
「ゼロクリア」は昭和か平成かではなく、必要性から判断すべきでは?(写真は吹田市役所)
「ゼロクリア大作戦」という軽いネーミングとは裏腹に「開始年度が昭和の事業」をいったん廃止して、必要であれば再構築するというずいぶん乱暴なもの。
新政権のすすめる「事業仕分け」には、「仕分け人」の強引なキャラとマスコミの連日の報道のおかげで注目があつまりましたが、吹田市はすでに密室の「事業仕分け」による事業見直しを行っており、そこへ、さらに重ねるこの「ゼロクリア大作戦」には問題点が多くあり、狙いはどこにあるのか、しっかり注目する必要があるようです。
第一の問題点は、不況によって住民のくらしが、かつてなく厳しくなっているときに、くらしや福祉にかかわるすべての事業を、「開始年度が昭和の事業」とわざわざ区切って見直す必要があるのか、ということです。事業を見直すのであれば、事業の開始年度にかかわらず、その必要性から判断するのがあたりまえではないでしょうか。
第二の問題点は、榎原・岸田両市政から引き継いで、「福祉の吹田」「子育てするなら吹田」と高く評価されてきた、くらし・福祉にかかわる事業の廃止というのでは、吹田市の事業をまるで「阪口色」に染め直すといわんばかりの作戦だということです。
第三の問題点は、この間の思いつきの事業がすすめられていることをどう評価するのか、ということです。吹田市は、今年約50億円もの減収が予想されていますが、吹田市は、すでに4000万円もかけて「0系新幹線」を東部拠点に移設、JR吹田駅前には「観光センター」を設置し、高浜橋ライトアップ事業などを行ってきています。差し迫った必要もない事業に十分な精査も行わず、市民意見も聞かないまま、無造作にお金をつぎこむ一方で、昭和にはじまった事業はすべて廃止せよとは、なんともちぐはぐな「作戦」と言わざるをえません。見直すべき対象は、思いつきの市政運営です。
市長はしきりに「トップマネジメントの強化」を強調していますが市役所の現場で、まじめに働く職員からは、「トップダウン」「現場を無視した思いつきばかり」とため息や悲鳴もわきおこっています。
トップダウンが目立つ(?)阪口吹田市長
国立循環器病センターの突然の東部拠点移転の表明も、これまで吹田市は地元に「現地建て替え」と説明、地域住民の意見をまとめ、ボランティアとして協力してきた自治会や地元団体からは、地元無視もはなはだしい、と反発の声が強まっています。
また、市民サービスの最前線に立つ職員の数を減らし、非正規職員に置き換えながら、部長級以上の幹部職員の数は、お隣の豊中市の2倍近くにのぼります。また、市長の側近である幹部職員が退職後に、いくつもの職場を渡り歩く「天下り」が容認されている現状もあります。「天下り」渡り鳥の中には、市長と私的旅行に行った先での飲酒運転事件による、処分を受けた元幹部職員も含まれているのですから、現市長の「私物化」「縁故主義」こそ「ゼロクリア」の対象です。
すべての事務事業を、「自分色」に仕立て直されては、まさに市政の私物化の極みです。現市政以前から脈々と受け継がれてきた事業をその時代の「市民の色」にコーディネートすることこそ今の吹田市に求められていることではないのでしょうか。