会社を退職した方、自営業者や農家などが加入する国民健康保険(以下国保と略)。吹田市では約5万世帯、つまり人口の40%が国保に加入されています。この国保、一般の社会保険と比べて保険料が高いので全国的に払えない人が続出。最近では「無保険の子ども」が社会問題化しました。
そんな国保が、さらに激変しそうな状況です。キーワードは「後期高齢者医療」と「広域化」。さて何が問題になっているのでしょう?
「ムチャクチャ高いで!というのが実感ですわ」。こうぼやいて今年度の保険料決定通知を見せてくれたのは、吹田市内本町で美容室を営んでいるKさん。昨今の不況を反映して売り上げは低迷。年間200万円少しの所得に、国保料金は何と27万8千円。少ない所得から国保料、税金、年金掛け金などを支払えば、肝心の生活費が底をついてしまう。
なぜこれほど国保料が高いのかというと、1980年代から国が補助金を大幅にカットしているからなのだ。サラリーマンが加入する社会保険は、労使折半で保険料を負担する。国保の場合は、使用者にあたるのが国になるので、本来なら社会保険並みに50%を補助すべきという考え方も成り立つ。
ところが実際に行われたのは、各市町村の国保会計への国庫支出は、この30年間で58%から25%へ削減され、その結果、吹田市などの自治体国保が赤字に転落し、保険料が高騰したのだ。
そんな中、かつての吹田市は国保財政を維持するために、一般会計からかなりの金額を繰り入れてきたのだが(図参照)、阪口市政になって、その繰入金も減少傾向、結果として保険料は年々上昇してきた。
そして今、難題が吹田市の国保を襲っている。それは「広域化」。政権交代時の民主党のマニフェストには、はっきりと「後期高齢者医療の廃止」を掲げていたが、廃止とセットで提案されつつあるのが「国保の都道府県運営」。つまり吹田市や摂津市が運営している国保を、大阪府で一元化するというのだ。
何でそれが問題なの?
実は問題が山積している。まずは平均保険料。08年のデータでは、吹田市の平均保険料は1世帯あたり15万60円。府下全体では15万8千949円に跳ね上がる。つまり吹田市は約9千円安いのだ。これが大阪府で「広域化」されると、吹田市の国保料金は「平均値」まで引き上げられる可能性が出てくる。さらに「一般会計からの繰り入れ」が全面カットされる予定。吹田市の法定外繰入金は昨年約9億4千万円。このお金が、保険料金の高騰を防いできた。大阪府下では、この法定外繰入金を拠出している市町村と、していない市町村がある。橋下知事は、基本的に「繰り入れない方針」なので、吹田のような緩和措置をとっている自治体の保険料は跳ね上がる。
今後どのような形で「広域化」されるのか、まだ決定されていないので正確な額を算出できないが、府下平均保険料に引き上げることで約9千円。法定外繰入金が廃止されることで約1万8千円、合計2万7千円もの保険料が、1世帯当たりで引き上げられてしまう可能性が高いのだ。
好景気で所得が増えている時代なら、まだ話は通る。しかし今はリーマンショック後「100年に一度の」大不況である。これ以上市民負担を増やせば、消費が冷え込み、廃業者が相次ぎ、自殺者も増えるのではないか?
疑問だらけの「国保広域化」。わが吹田市長はどのように考えているのだろうか?編集部の手元に「大阪社会福祉推進協議会」がまとめた資料「国保広域化?本当の狙いは何か」がある。この中に今年7月22日に開かれた「大阪府知事と市町村長の協議議事録・要旨」がある。これによると、知事「繰り入れはやめるべき。府下で300億くらいですか。やってないのは7団体くらい。繰り入れをやめて保険料率は統一で決めるということをやれば、繰り入れをやっている団体は、保険料は上がるんですが、それは「大阪府が決めた方針」で耐えていただけるかどうかなんですけど」。
この秋、大阪保険医協会、大阪商工団連合会などが呼びかけて「国保広域化・値上げに反対し大阪の国保を守る実行委員会」が結成された。 この実行委員会が呼びかける署名や集会などで、幅広い府民の「国保を守れ!」という運動を進めていかなければ、私たちの生活はますます苦しくなってしまうのだ。