暦の上では春になったが、まだまだ底冷えのする3月6日、豊中市の千里中央駅前に、20数名の医療関係者が集まった。
そろいのジャンパーに、「橋下知事さんへ、補助金をなくさないで」と大書された横断幕。みなさん元気よく署名を集め始めた。
みぞれまじりの小雨が降り出して寒かったのと、最近は「怪しい団体」が募金活動などをしているので、当初は通行人の反応も冷ややか。しばらくすると、「千里救命救急センターの人?お世話になってます」「えっ、補助金が削られて、なくなるかも知れへんの?それは困るわ」。次々と立ち止まって署名に協力する人、チラシを大事そうに受け取ってくれる人など、約1時間の宣伝で、184筆の署名が集まった。
阪急南千里駅前の千里救命救急センターは、大阪教育大学付属池田小学校での連続殺傷事件や尼崎でのJR脱線事故など、集団災害事故などで、多数の患者を受け入れ、人命を救ってきた「命の砦」である。おとなりの豊中市が「救命力世界一宣言」をしているのも、千里救命救急センターがバックアップしているからだ。
吹田市民のみならず、北摂地域住民の命を救ってきた大事な救命救急センターが、今、存亡の危機に直面している。
それは橋下知事が強引に進める補助金カット。
救急搬送件数 | DC搬送件数 | |
---|---|---|
平成18年 | 4182件 | 1853件 |
平成19年 | 3725件 | 2005件 |
平成20年 | 4332件 | 2235件 |
平成21年 | 4508件 | 2511件 |
もともとこの病院は、大阪府と医師会が建設し、府の外郭団体が運営する「新千里病院」だった。しかし「財政が足らない」と大阪府がこの病院を手放し、移管されたのが済生会吹田病院。2006年に病院をリニューアルし、済生会千里病院&千里救命救急センターとして再出発することになった。
救命救急センターは「3次救急」に分類される。つまり町の病院、市民病院などでは手当てできない重篤な患者を救う、「命の最後の砦」なのだ。
当然、赤字覚悟の治療態勢を取る。だからもともとは自治体の責務で運営されるべき病院だ。
病院が再スタートする時、大阪府は3億5千万円の補助金を、5年に渡って拠出すると約束した。この5年間、病院は期待に応えて多くの人々の命を救ってきた。
「5年経ったのでお金は打ち切りです」。大阪府の一方的な通告。病院の運営費約4億のうち、補助金が3.5億であるから、これは「実質的な死刑」に等しい。3月16日、みんなの願いがこもった請願署名が府議会において否決されてしまった。千里救命救急センター補助金継続請願に賛成したのは、日本共産党と社民党だけであった。一方で、橋下知事は4000億円かけて、地下鉄での関空〜大阪間を5分短縮することを計画している。3億3千万円でどれだけの市民のいのちが救われるのか、知事のもとには府民の声は届かなかったのだろうか。