吹田・行政の維新プロジェクト
出席者
吹田市集団回収業会・松浦 登さん
吹田鍼灸マッサージ師会・佐々木 暘明さん
吹田市職員労働組合執行委員長・丹羽野 和夫さん
丹羽野 大阪維新の会に所属されている現在の井上吹田市長は、橋下さんのやり方を真似て、就任するなり「財政非常事態宣言」を出して、吹田市の事業を全面的に見直そうとしています。もちろん行政の無駄を削ることは当然のことですが、市民サービスを守る上で削ってはいけない事業もたくさんあります。
今回は吹田市集団回収業会代表の松浦登さんと、吹田市鍼灸マッサージ師協会会長の佐々木暘明さんをお招きしました。お二人とも井上吹田市長が進めようとしている事業見直しには、大きな危機感を感じておられます。まずは自己紹介をかねて、今何が問題になっているのか、説明をお願いします。
丹羽野 資源ゴミの集団回収と同じく、鍼灸マッサージについても、吹田市独自の補助制度を見直すという提案がされていますね?
佐々木 今回の「事業仕分け」で、高齢者への鍼灸マッサージ助成券を縮小していくことになりました。この高齢者への鍼灸マッサージ補助については、昭和48年から私ども「吹田市鍼灸マッサージ師会」や「鍼灸師会吹田支部」などが、行政に要望を繰り返し、昭和59年にようやくはじまった事業です。現在は、はりきゅうマッサージを受けられる際にかかる費用3900円を、高齢者1300円、治療院1300円、吹田市1300円の3等分して援助する仕組みです。65歳以上で吹田市に住所があれば外国籍の方でもOK、この7年間の平均でいうと、吹田市として年間4300万円の予算があれば、この制度は維持できます。
丹羽野 1年間にどれくらいの利用者がおられますか?
佐々木 対象者が約6万8千人おられて、利用者が約5千人です。率にすると7.2%の高齢者が利用しています。この制度ができた頃は、10%を越えていました。利用率がなぜ減っているかというと、制度を知らない方が増えているからだと思います。今までは65歳になった時点で、通知が出ていたのですが、2006年、後期高齢者医療制度の実施以後、メーンの高齢者医療対象者が75歳になってしまったため、65歳の時に通知できなくなったのです。現在は吹田市報でお知らせしているのですが、市報を読まれない高齢者も多いようです。
丹羽野 鍼灸マッサージは保険治療だ、と誤解されている方も多いようですね
佐々木 そうです。はりきゅうで健康保険が適用されるのは、医師の同意書がある場合だけです。医師にかかり、それでも治癒しない場合などに医師の同意書が出て、そこではじめて健康保険が適用されるのです。医師による治療の後ということですから保険適用は少なくなります。もちろん、積極的に同意書を書いて、鍼灸院とネットワークしながら患者さんの病気を治療しようという革新的な医師もおられますが。
マッサージも同様で、健康保険を使えるのは脳梗塞後遺症などで筋肉がマヒしているか、関節が拘縮している時で、かつ主治医が同意した場合のみです。
ですから、高齢者にとっては「健康保険を使えないが、肩こりや腰痛を治してほしい」という事態になるわけです。
丹羽野 そんな保険が利かない状況だからこそ、助成制度が必要だったわけですね。
佐々木 はりきゅう、マッサージの最大の効用は、未病治(みびょうち)にあるのです。重い病気にならないうちに、全身の血行を良くして、代謝を促進させ、免疫力を高めるというのが「はりきゅうマッサージ」の役割です。
丹羽野 近年の研究からも、医療費の増大を抑制するためには、早期発見早期治療が大切である、といわれています。国民健康保険料が極めて高くなっているのも、所得格差の広がりと高齢化、そして医療費の増大があります。逆に言えば、「鍼灸マッサージ補助」を拡大して、多くの高齢者に受診していただき、健康維持に努めてもらった方が、吹田市としても黒字になるという風に考えられますね。
佐々木 そうなんです。現在の吹田市「事業見直し会議」での議論は基本的な誤認があります。まずは「鍼灸マッサージは、保険でカバーできる」と認識されていること。もう1つは、「補助金を削れば、財政が好転する」と機械的に捉えられていること、です。
丹羽野 もともと吹田市が他市に先駆けてスタートさせた制度です。喜ばれているこの制度を守るための予算4300万円を、「財政非常事態だ」と削ってしまっていいものでしょうか?むしろ、他市が吹田を真似てスタートさせたように、少子高齢化社会に必要な制度ではないかと思いますね。充実させるべきところを削ってどうするのでしょうか?
佐々木 吹田の財政事情は、大阪府でも良好だと聞いています。わずかな予算を削ったために、逆に重病者が増えて、医療費が膨らみ財政を圧迫した、などという事態はぜひ避けてほしいですね。そうなれば高齢者も不幸ですし、納税者も納得できません。吹田市全体も不幸になります。
丹羽野 お二人から、吹田市の極めて乱暴な、そして根拠のない「事業見直し」について異議が申し立てられましたが、実際には、維新の会と橋下代表が大阪市や府で行ったこと、またこれから行おうとしていることと同様に、バッサリと予算が削られようとしていますが。
松浦 キロ7円の報償金を削ると、おそらく集団回収を中止する地域が増えると思いますよ。吹田の各地域から、「報償金を削らないでください」という嘆願書が出ているようです。市議会でも「どうなっているのか?」と質問が相次いでいます。
佐々木 私どもも要望書を作り、市長との面談を申し込みました。しかし市長はこの問題では一切住民団体と会わない、話もしない、ということのようです。仕方がないので、すべての市議会議員に、市長と見直し会議での事実誤認について説明し、補助を継続してもらえるように要請しました。今年3月の議会で予算が決定されるようですが、ぜひ慎重に議論していただき、必要な予算は削らないでほしいと思っています。
丹羽野 今までの吹田市政は、住民とともに歩む、ということを基本としていたので、「住民と会わない」「話もしない」というのは異常です。維新の会や橋下さんは「自分たちに民意がある」と言いますが、民意を大事にするなら、積極的に会って話を聞くべきですね。
佐々木 たとえば毎年11月に行われる「吹田・万博ふれあいマラソン」がありますね。昨今のマラソンブームで、毎年数千人の方が参加されるのですが、あの大会が始まって以降、私たちは毎年ボランティアで、テントを張って参加者の健康管理、マッサージ、テーピングなどを行っているのです。昨年も約700名の参加者が、私たちの治療を受けられました。11年間、このような協力態勢を取ってきたのは、普段から吹田市と吹田市鍼灸マッサージ師協会が、2人3脚で「高齢者医療・福祉」を担って来たという「あうんの呼吸」があったからです。いきなり補助打ち切り、そして関係者と会おうともしない、という態度では信頼関係にもひびが入りますよ。
松浦 今は新聞、雑誌、段ボール、古布などを回収していますが、今後集団回収をやめれば新聞や雑誌は民間の回収業者が持って行くでしょうが、段ボール、古布は残るでしょう。リサイクルしようにも費用がかかりすぎるからです。集団回収をやめれば、そんなゴミは燃やすしかなくなるでしょう?そうすれば逆にコストがかかっていきます。万博公園の隣にある吹田市ゴミ焼却場は、当初700億円を超える大型のものを考えていましたが、私たちを含めた多くの市民が「ゴミを減量したら、小さな、安い焼却炉で十分だ」という世論になって、結果200億円と少し、つまり500億円近い税金を節約した実績があります。ゴミ減量は、財政的な見地からも進めるべきなのに、報償金を削るのは時代に逆行していますよ。
丹羽野 今は大阪ダブル選挙で維新の会が勝利したために、「行政の無駄を削れ!」「予算縮小」という流れになっていますが、必要な予算は守り、必要な事業は発展させていくべきです。今まで市政に共に協力して奮闘されてきた地域の方々に、いきなり何も相談せず、「金がないから、中止します」というのは、恩を仇で返すようなもの。行政維新プロジェクトに反対する署名も二万筆を越えて集まってきていると聞きます。井上市長の暴走をこれ以上許してはいけませんね。今後もともに奮闘して、福祉、環境部門で先頭を走ってきた吹田の伝統を守っていきたいと思っています。今日はありがとうございました。