出席者
藤白台保育園 笑顔いっぱいモクレンの会 会長・佐々木 政布さん
吹田市職員労働組合執行委員長・丹羽野 和夫さん
丹羽野 今回は吹田市立藤白台保育園にお子さんを預けていらっしゃる佐々木政布さんをゲストにお迎えしました。
吹田市が突然、市立保育園民営化の対象園名を発表しました。民営化される5つの保育園の中に、藤白台保育園も入っていたのですが、佐々木さんたち保護者にとっては寝耳に水の話でしたか?
佐々木 いいえ、公立保育園の民営化が議題に上りそうだ、という情報は、早くからキャッチしていました。しかし、どこの園かは、わからなかった。民営化以外にも、公立幼稚園と保育園が統廃合される、幼保一体化の話もあると聞いていました。
丹羽野 吹田市は、「維新プロジェクト」の一環で、行政サービスを削減しようと考えていますから、保育園の民営化と幼保一体化の両方を計画してきました。今回の案では今ある18園の中から、2016年に南保育園、17年に藤白台、吹田保育園、18年に岸部、西山田保育園が民営化される、ということになったのですが。
佐々木 わぁー、当たってしもた(笑)って感じです。私たちは2年前から藤白台保育園を民営化してほしくないと、保護者の有志で反対する会を作っていたのです。
丹羽野 自主的に民営化と幼保一元化反対の会を結成されていたんですね。
佐々木 「笑顔いっぱいモクレンの会」と名付けて、藤白台保育園を公立のままで存続させてほしい、とチラシを作って配ったり、学習交流会を行ったりしていました。ただ2年前から今まで、運動が今ひとつ盛り上がらなかったんです。それは、「まさか藤白台保育園が民営化されることはないだろう」「もし民営化されても先の話で、私たちには関係がない」というような雰囲気があったんですね。
丹羽野 ところが、急きょ発表された計画では5つの中に入っていた。臨時の保護者会を開催されて、民営化の問題を議論されたと聞きましたが。
佐々木 集まった保護者のみなさんは、すべて「民営化反対」で一致しました。今後吹田市の説明会が行われていきますが、「笑顔いっぱいモクレンの会」だけではなく、保護者会全体として民営化に反対していくことになったのです。
若い世代が「吹田に住みたい」と引っ越してくるほどだった
丹羽野 佐々木さんから見て、吹田の公立保育園にお子さんを預けて良かったな、と思われることは?
佐々木 まずは保育士の配置基準ですね。例えば1歳児の国基準は、6対1、つまり6人の子どもに保育士が1人ですが、吹田市は独自に5対1にして手厚く、きめ細かな保育を実施しています。(昨年まで4対1だったのが現市政で5対1に引き下げられた)公立保育園は、園庭も広いし、布おむつを使ったトイレトレーニングや、母乳から離乳食へ移行する時には、食材や調理方法などを親に指導してくださったり、子育ての内容という点で満足していました。
株式会社が参入することで「利益第一」の運営が心配です
佐々木 吹田市では事業者が決まらなければ公募条件を見直すということもいっています。企業参入もありえるということです。株式会社が参入すれば、「利益第一」になってしまうのでは、と危惧しています。例えば給食です。今は自園調理で、アレルギー食などにも対応してもらっているのですが、コストがかかるので、株式会社で対応できるのでしょうか?人件費をカットするために「保育士もアルバイトで」など、現場も子どもも困ってしまうようなことにならないか、と心配です。
私たち保護者の多くは「保育の質」が下がることを心配しています。でも「質」って数字に表すことが難しいでしょ?確かに民間になれば、保育園の外観はパンダやキリンなどが描かれた、きれいなものになるかもしれない。でも大事なのは保育の質だと思うのです。
丹羽野 何よりも保育士を正職できちんと配置して安心安全の保育園、子どもの健やかな発達を保証する保育園でないといけないと考えます。公立園の基準が引き下げられると、民間保育園の基準も下がっていきますから、結果、すべての保育園、幼稚園、保護者が困ってしまうことになります。
民営化の理由は「財政が非常事態だ」と言っているが
佐々木 吹田市は民営化の理由として、「子どもにお金がかかりすぎている」「財政が非常事態だ」などと言います。でも少子高齢化社会だからこそ、もっと子どもを大事にしてほしいと思います。赤字だ、利益第一だと「経営」で見るのではなく、保育園や幼稚園は未来への投資だと思います。
丹羽野 実際に保育園や学童保育に予算をつけて充実させると、子育て世代が転入してきます。共働き家庭が増えると、市民税を納入していただけるので、都市財政が潤うのですね。保育や教育にこそお金をかけて、上手に吹田ブランドを守るべきですね。
佐々木 そのことがうまく市民に伝わっていないように感じます。これは福祉問題の特徴ですが、「当事者でなければ関心が薄い」のです。「わんぱく」という新聞を地域で配っても、なかなか保育園のことに関心を持ってもらえていないのが実情です。
「民営化を元に戻そう」という市民運動とともに
丹羽野 最初に民営化のターゲットになっている吹田市立南保育園の卒園生の保護者や地域の方々と一緒になって、民営化反対の声を集めていきたいと思っています。「子ども子育て支援新制度」は、消費税の引き上げを財源にしています。そのための審議会が吹田でも開かれているのに、その答申や決定を待たないで、なぜ急いで民営化計画を発表するのか。
佐々木 「消費税増税と子育て支援」の関係で、他市でも審議会が立ち上がって、保護者のニーズ調査をしていると聞きます。吹田も保育園の民営化と幼保一体化の調査をしているのだから、その結果を待ってからでも遅くはないのに、民営化計画だけを急いで出すのです。吹田市は何を焦っているのでしょうか?
丹羽野 市長が元維新の会顧問なので、民営化の旗ふり役をしていることが大きいのかもしれませんね。先の堺市長選挙でも明らかになったように、住民の意見も聞かずに、強引に進めるという維新の手法は、通じなくなって来ているのです。吹田市は学校給食や市民体育館、市民病院などの業務で、強引に民営化を進めてきましたが、近い将来、「民営化は間違いだった。また元の直営に戻さないとアカン」という市民運動が起こるかもしれません。保育園の民営化に断固反対して、「福祉の吹田」「子育てするなら吹田」といわれた吹田市を守っていきたいと思っています。これからも力を合わせてがんばっていきましょう。
今日はありがとうございました。