SUITA 9条まもる座談会
『戦争だけは絶対にアカン!』で憲法9条を生かす太い流れを
広島、長崎の原爆投下はしょうがなかった?。現役防衛相のとんでもない発言。数10万人もの原爆犠牲者、今なお苦しむ被爆者のことを思えば、「しょうがなかった」などと言えるはずはありません。現在の安倍政権がいかにアメリカべったりであるか、がよくわかります。原爆投下から62年。平和憲法の値打ちを大いに語り合いました。
SUITA
9条まもる
座談会
床 島 央 明さん |
憲法を守り暮らしに生かす会代表世話人 |
田 口 清 子さん |
千里山9条の会世話人 |
有 田 八 郎さん |
吹田市職員労働組合執行委員長代行 |
床島 央明さん
“自民党支持だけれど9条は変えてはダメ”という人もいて 勇気づけられます
有田宙に浮いた5千万件の年金問題や、政治と金をめぐる疑惑の渦中にいた松岡農水相の自殺など、安倍政権は大揺れの状態ですが、一方で国会では、憲法を変えてしまおうとする国民投票法案や教育三法、イラクへの自衛隊派兵特措法の2年延長などがどんどん強行採決されています。教育基本法に「愛国心」が盛り込まれたり、防衛庁が省になったり、「戦前と似てきたのでは?」と感じさせられる昨今ですが、こんな時こそ「草の根からの平和運動」が大事だと思います。床島さんは吹田で一貫して平和運動に取り組まれていますが、最近の状況を見て、「きな臭くなってきたな」と感じておられるのではないですか?
小泉・安倍内閣の「暴走」にいてもたってもいられず
床島小泉さんになってイラクへ自衛隊が派兵され、そして安倍さんで憲法が変えられようとしているでしょ?私は戦後一貫して社会党の運動を支えてきましたから、特に感じるのですが、昔は自民党に対抗して、平和・護憲の一大勢力として社会党があり、労働組合では総評があった。曲がりなりにも「戦争へのブレーキ役」がいたわけです。しかし今は社会党も総評もなくなり、民主党や連合では小泉・安倍内閣の「暴走」を止めることができなかった。3年前にそんな危機感を持った有志が集まって、「憲法を守り暮らしに生かす会」を結成しました。吹田の社民党や新社会党、そして連合に不満を持っている労働組合のグループなど百数十人が集まって、運動を開始しました。今の政治状況を見て「いてもたってもいられない」という自然発生的なスタートでしたね。
有田普段はどんな運動を?
床島毎年秋に、護憲政治家や作家などに来ていただいて、憲法学習会をしています。それと毎月9日に「憲法9条を守ろう」と、街頭宣伝を。今までは吹田市南部の旧市街を中心に行ってきましたが、今後は北部のニュータウンも合わせて市内2か所でやろうじゃないか、と計画しています。街頭でチラシを配っていますが、なかなか受け取りが悪いですね。でもめげずに(笑)やっていると、「私は自民党支持だが、憲法9条は変えてはいけない」とおっしゃる方も現れたりして、勇気づけられることもしばしばです。
有田田口さんは千里山地域で「9条の会」を作って、地道に平和を訴えておられますね。
千里寺の参道に「まもろう!憲法9条」の大きな看板を
見える宣伝も大切
阪急電車千里線からよく見える「まもろう!憲法9条」の看板田口千里寺の参道に「まもろう!憲法9条」の看板を立てさせていただきました。阪急電車からよく見えて好評です。千里山9条の会は2006年5月に結成されました。千里寺の住職さん、女優さん、弁護士さん、そして現市長のお父さんなど、多彩なメンバー11人が呼びかけ人になってくださいました。大江健三郎さんらの「九条の会アピール」賛同者を募り、千里山9条の会のニュースをお届けしています。現在賛同者は300人を越え、ニュースは第5号まで発行しました。5月26日には関西大学9条の会と共催で、アメリカからオーバビー博士(※注)をお呼びし、大きなつどいを開催したところです。
床島私たちも「千里山9条の会」が、素晴らしい講演会を企画していると聞き、会員に案内を送り、ニュースで紹介しました。党派の違いを超えて、「憲法を守ろう」という運動が広がればいいですね。
有田 吹田は昔から共産党、社会党をはじめ、主義主張の違いを乗り越えて、一致点で運動を進めるという「統一の歴史」が、ありますね。メーデーも地区労が主催して幅広く行っています。憲法9条問題は、以前に増して幅広い共同が必要ですね。千里山だけでなく、ニュータウンや山田、第3中学校区など、次々と「9条の会」が結成されています。私は「山田9条の会」に参加させてもらっていますが、以前に「地元の戦争体験者の話を聞こう」という学習会がありました。兵隊で戦地へ行かれた体験談では、単に戦争の被害者だけではなく、極限状況の中での生と死の話で、参加者一同非常に感銘を受けました。みなさんが「やっぱり戦争だけは絶対にやったらアカンな」と感想を口にされていたのが印象的でしたね。
床島地域から草の根平和運動が盛り上がって、各地で素晴らしい取り組みが行われていますが、一方、国会では「雪崩を打って」法律が通過しています。安倍首相を見ていると、「何をそんなに急ぐのか?」と感じます。祖父でA級戦犯の岸さんが1960年に日米安保の改定を強行した時には、曲がりなりにも「アメリカの占領体制からの脱却」という「理由」を口にしていた。今は「戦後レジーム(体制)からの脱却」と「言葉だけ」は似たようなことを言いますが、実質は「戦前の国家体制に逆戻りさせる」狙いですね。岸さんの時代は、国民の中に「もう戦争は許さない」という平和運動への使命感のようなものがありました。戦後の学校教育の中で、平和憲法を熱心に教えていたのが、いつの間にか平和教育が後退し、若い世代の中に無関心層が増えていったように感じます。国民投票を18歳からにしたのも、「若い世代ほど戦争を知らない」ので、「改憲に支持が集まる」と考えたのではないでしょうか。
※注:オーバビー博士
アメリカ・オハイオ大学名誉教授。湾岸戦争が終結した1991年に「第9条の会・アメリカ」を設立。日本国憲法第9条の大切さを世界の人々に訴える活動をおこなっている。
「この青い星の危機を救うのは地球憲法第9条です」と提唱。
変えるな憲法9条 世界の人たちから応援が
「やってもムダ」というあきらめムードが一番こわいですね
田口 清子さん
若い世代にもっと 平和や憲法について関心をもってほしい
田口安倍さんは、外見はソフトなイメージがあって、テレビ世代の政治家だと思います。でもその政治は非常に怖い内容。憲法を変えようという、強引な政治に対して、私たち国民が草の根からの平和運動で立ち向かってはいるのですが、マスコミが国民の運動をなかなか報道してくれません。9条の会に1万人もの人々が集まっていても、テレビは一切無視。結果として、「集会をやっても、パレードをしてもムダではないか?」というあきらめムードが漂いがちです。「やってもムダ」というムードが一番怖いですね。
床島私の大学時代は、全学連運動が最高潮を迎えていて、若者が国会を取り囲んでいました。樺美智子さんがお亡くなりになるなどの事件もありましたが、結果として岸首相の訪米をストップさせ、首相の座から引きずりおろした。「若者が政治を変える」というエネルギーがありましたね。
田口オーバビーさんの講演会では、大学生にたくさん来てもらおうと、関西大学の校内で行ったのですが、参加者は私たちの世代の方が多かった。(苦笑)
有田私たち市役所の労働組合でも、若い方に憲法の大切さを再認識してもらおうと、「職場レポート」を書いてもらっています。例えば生活保護の職場からは、憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を守る立場から今の福祉を切捨てる現状に対する意見を書いてもらったり、図書館司書からは、市民の「知る権利」を守る図書館の役割を書いてもらうなど、仕事を通して憲法を考える取り組みを進めています。
「有事の際の市民保護」計画は戦争へ協力する態勢づくり?
有田 八郎さん
「国民の保護」や「自衛のために」…いつでもこんな美名のもとに 戦争は準備されて いるのですね
床島若い世代に伝えることと同時に、地域からの平和運動が大事です。例えば国民保護法に基づき、自治体ごとに「有事の際の市民保護」計画を立てることになりましたね。私は「市民保護」と言いながら、戦争に協力する態勢づくりだと見ていますが、吹田市はどのように対処しているのでしょうか?
有田確かに国から「保護計画を立てるように」という指導のもとに計画が作られていますが、ほとんど市民に知らされていません。地震や台風など災害に関しては避難計画の必要性を感じますが、国が言うのは「戦争の際の保護計画」であって、本来そんな指導に応じるべきではないと吹田市当局に申し入れました。実際は大阪府が策定したモデル計画をほとんどそのまま提出しているのだと思います。
床島戦争中、私たち家族は高浜神社の前に住んでいたのですが、「空襲に備える」と、立ち退き命令が出たんです。「疎開道路を作る」というのですね。ええ、今は神社の前の広い道路になっているところです。立ち退きに指定されて3日後に家を出ろ、と。地元の消防団、つまり私たちが自分で自分の家を壊していった。つまり「国民を保護する」という名前の元に財産を奪われたのです。その代わりとして貰ったのが国債。2ヵ月後に終戦を迎えてその国債は紙切れになりました。
戦争中、床島さんたちが「自分で自分の家を壊して」疎開道路が作られた(高浜神社前)
大切なのは「大きな共同」をつくること、地道に続けること
「話し合いで解決」憲法9条の精神こそ紛争解決の道
有田昔も今も「国民の保護」とか「自衛のため」という美名の下に戦争が計画されていくのですね。その意味では北朝鮮のミサイルや核実験を大々的に報道して、「攻めてこられる前にやっつけろ」「日本も核武装を」などという論調に、大変危険なものを感じます。
田口その意味では、「憲法9条を守る」ことは日本だけの問題ではないですね。「相手が武器を持つから自分も武器を、核兵器を持つなら核を」この考え方では際限ない軍拡競争で、いつかどこかで戦争が始まってしまう。軍隊を持ちません、戦争をしません、争いごとは話し合いで解決しましょうという9条の精神こそ、紛争解決の道だと思います。オーバビーさんは、今やアメリカと言うとブッシュのイメージがあり、世界から悪く思われている。しかしアメリカ政府と市民は別。アメリカの巨大な軍事費を減らして、医療や福祉に回してほしいという反戦・市民運動が広がっているとおっしゃってました。来年は日本で「9条世界会議」が開催されます。世界の多くの人々は「日本は9条を変えるべきではない」と応援してくれています。
床島アメリカの大統領が民主党になれば、イラクでの政策は変わるでしょうが、日本への要求は変わらないでしょう。巨額の税金、ジャパンマネーを使って在日米軍は再編成されていくでしょうし、規制緩和、外資の買収で、国民の財産はアメリカに吸い上げられていくのではないでしょうか?オリックスの宮内さん、竹中前郵政民営化担当大臣などは、アメリカ財界が望む役割を果たされたと思います。憲法を変えろと圧力をかけているのもアメリカですから、アメリカの要求をいかに拒否するか、が問われていると感じますね。
田口その意味でも今度の参議院選挙は大変大事な選挙です。憲法9条を守って、アメリカの戦争に巻き込まれないようにするか、それとも憲法を変えて、軍隊をよその国に派兵し、武器を輸出する「普通の国」になってしまうのか。
有田国会では「憲法を変えてしまえ」という声が強いかもしれませんが、地域は違います。全国各地には6000を越える9条の会が結成されています。あまり報道されないので、話題になりにくいのかもしれませんが、地道に地域から声を上げていけば、きっと9条と平和を守っていけるのではと感じます。
床島1972年に沖縄が日本へ返還される時、米軍基地を残したままの返還はダメだ、沖縄に平和を、という運動が広がりました。当時吹田は全国で初めて沖縄返還運動で社会・共産の両党が一致して運動に取り組んだところです。今の憲法を守る運動でも、地道に継続していけば、きっと幅広い運動につながっていくと期待しています。
有田そうですね。吹田は榎原市長の時代から、全国に先駆けて「非核平和都市宣言」を行い、憲法手帳を配った地域です。今後も保守から無党派の人々までが参加できるような大きな共同を進めて行きたいと思っています。今日はどうもありがとうございました。