アメリカは戦争中毒国家
戦争のパートナーを日本に求める
「テロ特措法」問題が安倍首相の辞任に?
ゲリラのロケット弾攻撃で炎上する米軍のトラック(バグダッド)
安倍首相の突然の辞任には誰もが驚いたのだが、辞任理由の一つとして推測されるのは「テロ特措法」問題で、ブッシュ大統領との約束を果たすことができなくなったからでは?というもの。国民よりもアメリカを大事にするような首相は辞任も致し方ないと感じるが、先日放映された「朝まで生テレビ」では、「アフガンでの『テロとの戦い』に対して自衛隊艦船が給油しているが、その油の一部がイラク戦争に使用されていた」ことが暴露されていた。イラクに続き、アフガンでも泥沼にはまりつつある「テロとの戦い」。ここでは「なぜアメリカは国際世論を敵に回してまで、イラクを攻撃したのか」について、私なりに考察してみたい。
イラクには、掘削コストの安い石油が
OPEC加盟国 |
タカ派と
いわれる国々 |
ハト派と
いわれる国々 |
イラン |
サウジ |
イラク |
クウェート |
ベネズエラ |
UAE |
|
カタール |
その他 |
リビア |
インドネシア |
アルジェリア |
ナイジェリア |
理由その一は「石油」である。石油はいまや1バレル80ドルの高値をつけ、各国が高騰する原油価格に悲鳴を上げつつある。大きな原因は中国の経済成長。人口13億の中国は今後も原油輸入を増やしていくだろうし、インドも続いていくだろう。限りある資源、石油をめぐって、水面下でアメリカ、中国、ロシアなどの大国がしのぎを削っている。
イラクの油田は、地表近くまで原油がせり上がってきている。古代、イラク・クルド地域では地表から染み出すコールタールを使って、道路整備(アスファルトの原型のようなもの)をしていたほど。つまりイラク原油は、ちょっと掘れば噴き出す、「掘削コストの安い」原油で良質。逆に北海の海底油田やアラスカの氷河の下に眠る油田などは、「掘削コストが高くつく」油田だ。
つまりアメリカは「イラクの油田そのもの」に魅力を感じたのだ。
破産国家のドルよりフセインはユーロを
この油田は米軍がガードしている(クルクーク)
理由第2は「ドルの防衛」だ。ご承知のとおり、アメリカは双子の赤字。年がら年中戦争をしているため、巨額の財政赤字を抱え、そして消費大国アメリカの貿易赤字は天文学的数字。つまりアメリカは破産国家である。通常このような国の通貨ドルは、暴落してもおかしくはない。
2000年10月、サダムフセインはイラクの原油決済を、ドルからユーロに切り替えた。原油1バレルを100ドルで売るのと、100ユーロで売るのはどちらが得か?ドルは暴落の恐れを抱えているので、ユーロ取引の方がリスクは少ない。つまり商売としては、フセインは正解だった。しかしこれが「アメリカのトラの尾を踏んだ」のだ。
なんとしてもドルを守らねばならないブッシュは、「次の標的はイラクだ!」と叫んだ。2003年6月、アメリカはフセイン政権を打倒した直後に、イラク原油の決済をユーロからドルに戻している。今後アメリカは、誰が大統領になったとしても「崩れゆく通貨ドル」を、軍事力を使ってでも守り通さねばならない。「ドルの防衛」は、これからの世界戦争を読み解くキーワードである。
石油価格の決定権をアラブの団結にくさび
第3は「石油価格の決定権」である。石油価格は何で決まるか?当たり前だが需要と供給の関係で決まる。需要は先述したように高まっている。では供給は?OPECである。石油輸出国機構OPECがどれだけ原油を掘り出すか、で価格が決定する。
このOPEC、表の通り11の加盟国で成り立っているが、実は一枚岩ではなく、常に2つの派閥がしのぎを削っている。第1の派閥は、イラン、イラク、ベネズエラだ。これらの国は、「石油が出るが、人口も多い」国。つまり石油収入を国民の福祉や教育、町づくりに使わねばならないため、常に価格を高く設定しようとする。これら諸国は西側では「タカ派」と呼ばれる。「タカ派」に共通するのは、悪の枢軸であり、反米であること。
2番目の派閥は、サウジ、クウェート、UAE。これらは「石油が出て、人口が少ない国」。砂漠の王国で独裁国家、さらには親米である。有り余る石油収入、人口も少ないので、石油価格が下がってもやっていける国。西側では「ハト派」と呼ばれる。
アメリカは、イラン、イラク、ベネズエラが団結しないように、くさびを打ち込みながら、サウジ、クウェート、UAEを大事にする。そうすることによって「石油価格の決定権」を握るのだ。価格決定券を握ればどうなるか?
ブッシュは、石油メジャーの「番頭」だ
原油を上げたいときは、サウジなどと結んで、原油をあまり掘らないようにする。逆に下げたいときはサウジに掘らせれば良い。アメリカの石油メジャー、エクソン・モービルやシェブロン、テキサコなどは世界各地に大きな石油備蓄基地を持つ。原油を下げて輸入し、備蓄しておく。そして価格を上げて売りぬく。売りぬいた頃にまた下げて輸入、そして吊り上げて売り抜ける。
これを株式市場でやればインサイダー取引である。前もって情報が分かっている「先物市場」なら負けるはずはなく、ぼろ儲けができる。
もちろん「軍産複合体の圧力」も第4の、そして最大の理由だろう。イラク戦費は毎月約1兆円。この巨額の予算に「死の商人」が群がる。ブッシュやチェイニー、ライスやラムズフェルドなどは、この軍産複合体、石油メジャーの「番頭」なのである。
米国の武器生産は世界の50%。「武器と石油の取引」はおいしい
上に掲げた地図は世界の兵器の流れを示したものである。アメリカは2000年の時点で、世界の武器のうち50%以上を流通させている。そして、中東は世界の武器のうち40%を消費している。そしてグラフに示すようにアメリカの武器輸出量がV字を描いて上昇している。今や原油1バレル80ドル時代である。「オイルマネー」が入る中東と、世界ナンバー1の武器生産国アメリカ。「武器と石油の取引」は、この上なく「おいしい商売」なのだ。
アメリカは戦争中毒国家である。このようなアメリカの暗い部分をよく理解したうえで、今後の日米関係を考えねばならない。今の日本政府は、アメリカべったりの日米関係で良しとしている。行き着く先はアメリカが引き起こす戦争のパートナーだ。このような関係は「友人」ではなく「奴隷」である。真の友人は、相手が間違っていたらきちんと意見を言って、間違いを正すもの。日本が本当の意味でアメリカにもその他の国にも愛され、必要とされる国になってほしいものだ。