【イラク帰還米兵、アッシュ・ウールソンさんプロフィール】
アメリカウィスコンシン州ラインランダー市生まれ。ウィスコンシン大学卒業。学資の為に「州兵」となり、2003年から1年間をイラクで従軍。イラク市民を犠牲にする戦争の現実を目の当たりにし、帰国後「反戦帰還兵の会」に参加。5月に幕張で開かれた「9条世界会議」に向けた広島から千葉までのピースウォークで「貧困と戦争の廃絶」を訴えながら歩き通した。現在、シアトル北部ベリンガンに妻子と共に在住。26才。
2003年2月、イラク戦争が始まる一ヶ月前に電話がかかってきて、「どこか分からないが、我々の部隊がイラクに派遣されるようだ」と知らされました。その後米軍は私たち兵士に、「イラク人を人間と思わないように」するための教育を施しました。
私たちはイラク人を「ハッジ」と呼びました。これは戦前、日本人を「ジャップ」と蔑称で呼んだのと同じです。9・11テロはイスラム教徒がやったもので、イラク人は敵だと教えられました。米軍は戦争を正当化します。広島・長崎への原爆投下も、真珠湾攻撃の報復だった、と教育されました。そんな教育を受けた後、イラク南部のナシリーアという町に、約一年間いました。
上層部から、「軍用車に向かってくる子どもたちは、手榴弾を投げてくるかもしれないから、近づけないように」という命令がありました。それで「パチンコ」を調達して、近づいてくる子どもに石を当てる兵士がいました。立派な大人が、6歳にも満たないような子どもたちに、石を当てて笑いあっているのです。大抵の場合、そんな時でさえ、別の兵士は子どもたちに銃口を向けていました。私はこのシーンが脳裏に焼きついてしまったので、帰国後ベトナム戦争帰還兵にこの話をしました。すると彼も、ベトナムで同じようなことをしたというのです。実際には、イラクの子どもたちが米軍に対して手榴弾を投げるという事件は、ただの一件も起きませんでした。ベトナムでもなかったでしょう。
イラクではこの戦争で約100万人もの民間人が殺されてしまいました。家を失った難民は約500万人です。米兵は4300人亡くなりました。衛生状態が悪く、子どもたちはコレラで死んでいきます。薬があれば簡単に治癒するのに…。失業率は60%です。食べることも、仕事に就くことも絶望的な状況です。この状況を作り出したのは、米軍の侵略戦争であることは明らかです。
またイラクはスンニ派、シーア派の内戦状態に陥っていますが、あれは米軍が内戦を作っているのです。戦争当初、米軍は主にスンニ派を攻撃し、シーア派に武器と資金を援助しました。しかしアルカイダがイラクに入国し、テロを繰り返したので、次第にスンニ派は米軍と協力するようになり、アルカイダを一掃するため、米軍から武器と資金を受け取りました。つまり、スンニ派、シーア派ともに、米軍から武器を供給され、互いに争うようになったのです。
私自身、PTSD(外傷後ストレス障害)に悩まされています。イラクで経験したことと、アメリカでの日常生活のギャップが埋まらない。アメリカのホームレスの3人に一人は帰還兵です。うつ病になり自殺する人も多い。一日に平均17人もの帰還兵が自殺しているんですよ。異常な事態です。イラク戦争で学んだことは、「利益を得た人は誰もいない」ということ。イラク人も米兵もそれぞれ失うものが大きすぎました。
軍需産業と石油産業ですね。アメリカ経済は落ち込んでいますが、戦争&石油企業は業績を伸ばしています。ハリバートンという石油関連企業は、チェイニー副大統領がCEOを務めていましたが、売り上げを急増させています。ライス国務長官もシェブロンという石油企業の役員でした。シェブロンの石油タンクには「コントリーザ」という名前がついているものもあります。(コントリーザはライス国務長官のファーストネーム)何よりブッシュ大統領自身がテキサスの石油会社を所有していました。
今年5月に開催された「9条世界会議」に参加したことです。武力では平和を守れないということを確信し、日本の憲法9条の素晴らしさを実感しました。貪欲な支配者は、戦争をすることで利権の拡大を狙っています。しかし9条の考えを世界に広げていけば、いつか平和な世界が訪れると思っています。平和な世界が実現することを夢見て、精一杯がんばります。
アッシュさんの活動詳細は
http://blogs.dion.ne.jp/k9mp/