2009年2月から3月にかけて、10度目となるイラク取材を敢行した。今回は激戦地バグダッドに約一週間潜入し、イラク戦争6年目の街の様子、戦争被害者の実情などを取材した。バグダッドで目にしたものは…。戦争で家族を、仕事を、手足を、健康を奪われた人々の現実だった。
指がくっついている子ども
歯のない子ども
次にやってきたのが「生まれつき歯のない子ども」だ。「見ろ!乳歯が全然生えてこない。この子の年齢ならそろそろ永久歯に生え変わるのだが、永久歯も全くないだろう」ワリード院長が女の子の口を開けながら「遺伝子異常だ」と解説する。
「戦争後、このような子どもはダブル(2倍)になった。おそらく10年後にはトリプルになるだろう」。「ウランの影響だと思うか?」との問いには、「間違いない、劣化ウラン弾の放射線によるものだ」と断言した。
待合室で患者を数える。口唇口蓋裂の赤ちゃんが1人、2人…。指がくっついている子、歯が生えてこない子、瞳の位置がおかしい子、全身麻痺の子ども…。全部で13人いた。戦争による環境汚染は、想像以上だった。「新たなヒバクシャの群れ」を前にして、私は言葉を失った。
バグダッドを出て北へ約5キロ、「アルタジ地区」には広大なごみ処分場がある。半砂漠の荒れ果てた土地に生ごみが放置されている。羊や牛がその生ごみを食べ、その食べ残しを鳥がついばんでいる。猛烈な悪臭。そんなごみの山の中に難民たちの家が点在し、家の前には大量の黒いビニール袋。
難民たちが拾い集めた廃プラスティックや空き缶、空き瓶などの「商品」がビニール袋に詰め込まれているのだ。
ここに住み着いた難民は約300家族、2千人以上。ほとんどがこの戦争で家を奪われ、流れ流れてここにやってきた人々だ。
悲惨な戦争から6年。先日オバマ大統領、その後ヒラリー国務長官がイラクを電撃的に訪問し、あらためて「イラクからの米軍の撤退」を口にした。撤退するのは早いほうがいいだろう。これ以上米軍がいても、戦死者が増えるだけだし、治安を守っているのはイラク軍なので、米軍の存在意義はすでにない。
しかし「撤退したらすべてチャラ」なのか?イラクにばら撒いた劣化ウラン弾やクラスター爆弾の責任は誰が負うのか?誤射で殺してしまった人々への補償は?何より「大量破壊兵器はなかった」のだ。ウソで始まった戦争で、多くの人々が愛する家族を失った。謝罪だけでは足らない。誠実な補償が必要だ。「戦争だから仕方がなかった」「大統領が変わったから関係ない」で済む話ではない。オバマ大統領が今までの「戦争政策」をどのように「チェンジ」させていくのか、厳しく監視していくことが必要だ。
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