上:カンダハール空港には軍用ヘリが駐機していた
中:米軍が「仕掛け爆弾通り」をカット
下:「仕掛け爆弾通り」を猛スピードで突っ走る米軍の装甲車
アフガニスタン南部の都市カンダハールを、昨年と今年、2回訪れた。カンダハール周辺は治安が極度に悪化し、今や陸路で行くのは自殺行為。外国人が乗った車を発見されれば、よくて拘束、悪くて殺害である。ちなみに地元の人々も陸路で行こうとする人はめっきり減ったので、必然的に空路、つまり飛行機は満席状態となる。
カンダハール空港は、沖縄の普天間基地とは真逆の基地である。普天間は民家の中にあって、戦闘機は小学校の屋根すれすれに着陸してくる。カンダハール空港は、周囲数キロにわたって何もない広大な土地に位置している。民家はもちろん一本の木も生えていない。
なぜか?
民家や高木があれば、その物陰に隠れて武装勢力がロケット弾を放つから、治安維持のために周囲の障害物を取り除いているのだ。
カンダハール空港内部に米軍基地があって、訪問時には、基地をせっせと拡張していた。オバマ政権はアフガニスタンに3万人もの米兵を増派したが、そのほとんどはこの基地に配属される。米軍はこの秋から「カンダハール掃討作戦」を行う予定なのだ。
カンダハール空港と市内を結ぶ国道は、通称「仕掛け爆弾通り」と呼ばれている。米軍の戦車や装甲車が頻繁にこの通りを通行するので、タリバンが仕掛けた路肩爆弾がよく爆発する。
覚悟を決めて「仕掛け爆弾通り」を通行する。すれ違うのは重機や建設資材を積んだ大型トラックだ。
おそらくカンダハール基地の建設工事は、米軍、つまりペンタゴンが資金を出すのだろう。しかしその基地に通じる道路、道路に敷設される上下水道、基地に引き込まれる電気やガスなどは、「アフガン復興費」から出されるのではないか?
鳩山前政権がオバマ大統領に約束した50億ドル(約4500億円)という巨額の支援金が、こうした米軍関連工事に使われるおそれがある。「アフガニスタンの人々のために道路を整備しました」「上下水道を引き込みました」と聞けば、多くの人は「日本も貢献したんだな」と感じるだろう。しかし実際は私たちの貴重な税金が、米軍のために使われてしまうことになる。避難民キャンプの子どもたちや、誤爆されて障害を負った人々に使われるのなら、お金を拠出する値打ちもあるが、米軍やカルザイ政権の賄賂に消えてしまうとなれば、援助などしない方がマシだ。私たちはこの50億ドルがどのように使われたのか、しっかり監視する必要がある。現金には色がついていないのだ。
カブールで建設中の高級マンション。貧富の差が広がっている
私はこの10月にも6度目のアフガニスタンを訪問する予定だ。
普通の市民が空爆と銃撃戦で、家や親族を失っていく一方で、米軍関連の建設工事や麻薬で儲けた人々が、首都カブールにおしゃれなマンションを建てていく。
圧倒的な格差が戦争の引き起こしたもう一つの側面だ。新自由主義、つまり「儲けた者勝ち」の行き着くところ、それが戦争なのだろう。
ジャーナリスト 西谷 文和