Suita市民しんぶん.Vol.2(2006)
「えっ、僕の小学校がなくなるの?」04年3月、吹田市立北千里小学校の児童と父母の間に衝撃が走った。吹田市教育委員会から突然発表された北千里小学校の廃校方針。近隣の青山台小学校の児童数が極端に減少、「学校規模適正化」のために、北千里小学校を廃校し、青山台1丁目から通学する子どもは、青山台小学校へ。古江台3丁目から通学する子どもは古江台小学校へ行きなさい、というもの。吹田市教委は(1)自治会など地域代表者、(2)青山、古江、北千里小学校PTA、(3)学校関係者の3者で「検討委員会」を立ち上げ、この廃校問題を議論。9回にわたって「激論」が繰り広げられたが、結局意見の一致を見ず、05年3月、検討委員会の個人意見書を報告書として教育長に提出した。吹田市が突然発表した「廃校案」で、結果として地域住民とPTAの間に亀裂を作ってしまった格好だ。廃校の結論も出ていない中、吹田市は今年の3月議会で、受け入れ校である青山台、古江台小学校の改修工事の予算を計上した。いったいどうなっているのか、現地からリポートする。
「学校の適正規模」にこだわる理由は何? 「全く寝耳に水の話でした。最初にこの話が出てきたのが04年3月、わずか1年の間、つまり05年4月に廃校したい、という提案ですからね」と、望月和彦さん(北千里小学校保護者)は憤る。北千里小学校PTAが急きょ取り組んだ全校アンケートでは、廃校に賛成が14、反対は157世帯となり、圧倒的多数の家庭が反対を示した。
別表に示すように、北千里小学校は適正規模。青山台小学校は現在7クラスであるが、今回の「廃校案」を実施しても3〜4年後には適正規模である12クラスを下回る可能性が高い。他に規模適正化案はあるのに、わざわざ北千里小学校を廃校にしてまで、「学校の適正規模」にこだわる理由は何なのか?
学校名 |
児童数 |
学級数 |
学級規模 |
今後の見通し |
校地面積 |
---|---|---|---|---|---|
青山台小学校 |
183 |
6 |
30.5人 |
6〜8 |
23441 |
北千里小学校 |
328 |
12 |
27.3人 |
12〜14 |
19611 |
古江台小学校 |
343 |
12 |
28.6人 |
12 |
25068 |
藤白台小学校 |
866 |
24 |
36.1人 |
24〜26 |
23719 |
「ところが今年の3月議会で、吹田市は受け入れ校になる青山台、古江台小学校の改修工事の予算を計上したのです。北千里小の廃校はまだ決まっていません。これって『うめかも』と同じじゃないですか。子どもや保護者の意見も聞かずに、計画を勝手にごり押しして、既成事実化させたいのだと思います」とは前田達夫さん(同小学校保護者)。
性急な提案で住民に分断もちこむ 「人口が減少し、高齢化を迎えているニュータウン。今後は学校現場単独で統廃合や校区変更などを決定するのではなく、大きな街づくりの視点の中で、決定していくべきだ」と北野理事は言う。
それはその通りだ。市役所には「ニュータウン再生室」というセクションもできた。でも大きな街づくりの視点が大事なら、極めて近視眼的な「1年後に廃校」という性急な提案をしたのはなぜか?結果として地域住民の中に亀裂を生じさせた市の責任は?ましてや、最高責任者である市長が、廃校も決まっていないのに「跡地はコミセン」と軽々しく発言する必要があったのだろうか?
「市長は政治家」であるなら、ちゃんと北千里小学校の子どもたちや保護者の声も聞いた上で、小学校の適正規模化やコミセン問題を進めていくべきだったと感じる。事前にそうした話し合いもせず、「今から1年で廃校します」という提案は、やはり無茶だ。「何度も面談を申し込んでいますが、市長はいまだに私たちに会おうとしません」(前出・望月さん)。ここでも「うめかも現象」(市長は都合の悪い人とは会わない)が起こっている。