SUITA市民しんぶんVol.4(2006)
吹田青年探偵団(その2)
写真(1)地下鉄井高野駅予定地。駅前には団地と高圧鉄塔が
阪口吹田市長が突然「地下鉄8号線(今里線)を、大阪市東淀川区の井高野から岸部まで延伸させたい」と、市議会で発言。えっ、地下鉄8号線?井高野から岸部?もちろん地下鉄が延伸すれば沿線の人々は便利になるかもしれないけど、建設にはいくらかかるの?予算は大丈夫?どんなルートを通るの?…唐突な発表だっただけに疑問はたくさん。さっそく現地、井高野から岸部までチャリンコで走ってみました。
写真(2)「私は乗らへんよ。だってこの地下鉄、梅田に行かへんもん」
「あったー、あれや。もう駅ができてるぞ」。阪急相川駅から自転車で走ること10分、東淀川区北江口4丁目。大阪市営・府営住宅や住宅供給公社などの団地が立ち並ぶ一角に、「地下鉄8号線井高野駅」が現れた。もうすでに駅舎も階段も完成しており、あとは外壁をきれいにして「開通」を待つばかり。
「この17棟は駅前一等地やな」「しかしこの高圧鉄塔が無粋ですね。駅前一等地ですが電磁波が心配です」。向こうからおばちゃん2人が歩いてきた。ちょっと話を聞いてみよう。
写真(3)大阪市営バス井高野車庫があった
「今年の12月に開通するって聞いているよ。開通したら?私は乗らへんよ。だってこの電車、梅田には行かへんもん。今まで通り阪急を使うやろな」「この井高野駅からJR岸部まで地下鉄が伸びるって話は聞いたことがありますか?」
「えっ、岸部まで?知らんわ、そんなん」。おじさんが通りかかった。
「えっ、地下鉄が岸部まで?聞いたことないな。ワシか?ワシはバスを使うで。70歳越えたら無料やしな」。
写真(4)安威川から正雀駅まで740m。ここから150億円もかかるのか…
どうやら終点井高野駅付近の方々は、岸部まで延伸するという話は聞いたことがないようだ。
私たち一行は、独断と偏見で「もし岸部まで延伸するならどのコースか」を予想し、チャリンコでそのコースをたどってみた。
地下鉄は私有地の下は通れない。また広い道でないと工事が大変だ。井高野駅から井高野中学前を通り、市バスの井高野車庫へ。車庫を過ぎると、すぐに安威川。この安威川を越えれば吹田市南正雀であるが、この辺りは川幅がかなり広い。地下鉄を通すとなれば、地下で越えるのか、それとも橋を架けるのか…。
写真(5)確かにJR岸辺駅までつながれば便利だが…
吹田と摂津を結ぶ安威川橋を渡ろうとすると、なんと橋を渡っていないのに吹田市南正雀5丁目。「えっ、ここは吹田市なんですか?」「そうやここだけ川を越えた飛び地になっているんや」
橋を渡ると「阪急正雀駅740m」という看板。地下鉄は1メートル掘るのに約2千万円かかるというから、この橋から駅までで150億円くらいかかるのか…。
写真(6)駅前の温泉で汗を流したのだった
きれいな錦鯉が泳ぐ正雀川の堤防を走る。閑話休題。なぜこの正雀川に鯉が泳いでいるかというと、下水処理水がこの川に流れており、水温が高くユスリカが発生しやすいため、鯉を放流してユスリカの幼虫を駆除しているのだ。
「さぁ、着いたぞ。JR岸辺駅や」「結構近いですね。確かにここまで地下鉄が伸びればJRと接続できますが、果たしてそれだけの投資をして見合う事業なのかどうか…」「それに岸部側、つまり吹田市民はJRで梅田に行くでしょうから、実際に利用されるのは大阪市民が多いでしょうね」「それにしても岸辺駅前、きれいになったなー。スーパーや居酒屋、温泉までできてるぞ」。
かつて近畿コンクリート(株)の工場だったところに、新しい街ができている。残暑厳しい中でのチャリンコの旅、最後は温泉で締めくくられたのだった。
「地下鉄8号線延伸」について、吹田市東部拠点整備室宮村長男理事にインタビュー。
―井高野から岸辺まで地下鉄を通すと、予算は?
宮村 約500億円程度と言われています。もちろん大阪市、府、国、そして吹田市の負担割合などは決まっていません。仮に実現したとしても、赤字路線になる可能性が高い。現在大阪地下鉄で黒字なのは御堂筋線だけですから。
―いつ頃実現するのでしょう?
宮村 まだまだ先の話です。市長とも「10期くらい(40年)やらはったら、実現するかもしれません」と話しているほどです。安威川までは大阪市さんなので、今、大阪市計画調整局と話し合いを持ち始めたところです。
―今はルートや駅舎など、設計図もない状態ですか?
宮村 設計図なんてとてもとても。JR東海道線と阪急線がある岸辺・正雀に地下鉄を引き込めれば、交通網の整備ができるな、という「概念」の段階です。
しかし地元の気運もまだまだ盛り上がっていないようですし、まだまだ「心の準備」のような段階ですよ。
確かに環境に優しい鉄道が見直され、車を持っていない方のためにも、交通網が整備されることは素晴らしいことだ。しかしそのためには莫大なお金がかかる。市民の側から強い要望も出ていない中で、なぜ唐突にこの提案がなされたのか?
(仮称)吹田貨物ターミナル駅移転と、吹田操車場跡地の街づくり問題で紛糾する吹田市情勢の中で、どうやらこれは吹田市長の「勇み足」計画のようだ。