吹田市の環境アセス条例は、
宝の持ち腐れ
有田 八郎さん
地域の声を市政に反映させることが大事。そんな吹田であってほしいが…
有田昨年12月、この「すいた市民しんぶん刊行委員会」主催で、まちづくりシンポジウムが開催されました。その中で、高層マンション建設問題、千里ニュータウンの公営住宅建て替え問題、新芦屋地区の私有道路問題、そして「うめかも」(梅田貨物駅の吹田移転問題)と、現在の吹田市民が抱える様々な地域問題が噴出しました。本日はもう少し各地の問題を掘り下げて、何が問題なのか、解決策はあるのか、吹田市はどう関わるべきなのか、などを討論したいと思います。
条例に基づく業者との
「あっせん」の話はたった一回
矢沢私たちの住む山田西B住宅と、問題のJR社宅マンション予定地は、従来は同じ一つの敷地でした。現在の吹田市民病院が片山町に建設される際に、吹田市の土地との交換で、JR西日本の土地になったのです。だからかつてのJR社宅は、私たちB住宅と同じように5階建てで、同じ向き。景観にも緑にも恵まれた街でした。
ところがJRは急に、この社宅を取り壊して13階建ての高層マンションにするという。JRの敷地境界わずか7メートルのところに、「城壁のような」マンションが建てられればB住宅は3方を囲まれます。「これはたまらん」と対策委員会を作ったのです。
このままでは「城壁のような」マンションが建つと危惧するB住宅のみなさん
有田予定地の周りに、反対のノボリや看板が林立してますね。計画の変更はあったのですか?
矢沢地主であるJR西日本は交渉に現れません。子会社の「西日本開発」が開発し、交渉には「アズ開発」という企業が出てくる。予定の13階建てが、12階〜8階に変更されて行くのですが、私はこれは「削りシロ」だと思います。
有田「削りシロ」と申しますと?
矢沢それが業者の賢いところで、わざと予定より高い階数を提示し、住民たちの反対運動があると、いかにも「譲歩しました」という形を作っているのです。ですからB住宅の境界からわずかなところに「城壁のように建つ」ことは、変更されません。私たちは建築そのものに反対しているわけではない。「もう少しバックしてほしい」「もうちょっと背を低くしてほしい」「向きを変えてB団地と同じ配列で建ててほしい」と言ってるだけなのです。
岩根「吹田市中高層建築物の建築に係る紛争の調整に関する条例」では、市長が「迅速かつ適正に調整する」責務を持つと定められていますが?
矢沢条例に基づいて、あっせんの話し合いを持ちましたが、3回だけ。それも突っ込んで話ができたのはたった1回で、数時間のみ。「あっせん」の次は「調停」なのですが、吹田市は、「これ以上は無理」と、打ち切りに動き、結局話し合いは、実質たったの一回でした。
安心の吹田へ、まず開発問題の解決が先決
岩根 良さん
吹田を夕張にしてはならない。税金は市民のために使うべき
藤井私たちはもう7年も前から、自治会をあげて「公害道路を止めてほしい」と運動してきました。私は代表者として現市長と3回ほど面談しましたが、常に「(代表とだけではなく)住民たちと対話してほしい」「意見を聞いてほしい」とお願いしました。しかし一度として会ってくれません。アセス条例に基づいた「公聴会」にも、現市長は一回も出席しませんでした。私たち「公述人」が吹田メイシアターで、喘息患者の不安や、交通事故の心配、財政面での不透明さなどを訴えているとき、日本海でカニを食べに(笑)行っておられたようです。
ちょうど1年前に住民投票の運動を始めました。私を含む5名が代表者となって、住民投票を求める署名が始まったのが1月25日。現市長の名前で「署名を始めてもよろしい」との許可があって、スタートしたのです。署名期間は1か月。住所氏名に加えて、生年月日、印鑑が必要だったので、寒い冬でしたが一軒一軒回りました。その署名を集めている途中、2月10日に、市長は「うめかもの吹田移転」について勝手に合意してしまいました。これはおかしい話です。一方で「住民投票するための署名集め」に許可を与えておきながら、もう一方で「住民投票は必要ない。JRと合意する」ですから。
市長は勝手に住民投票必要なしと「JRと合意」
藤井 幸雄さん
うめかも移転合意する前に、せめて住民投票をしてほしかった
有田あの時はマスコミ各社も注目して、「うめかも」の名前が一気に広がりました。それと同時に、「住民投票の結果を待ってから決めるべきでは」と、現市長のやり方に疑問も広がりましたね。
岩根吹田市の環境アセス条例は、開発業者にとっては大変厳しい条例だといわれています。実は「うめかも」問題を想定して条例を作ったと聞きます。梅田貨物が来るのなら、厳しく規制をして、公害が出ないような形で決着しよう、政府やJRに対して、住民の要望が届くようにしようという意図ですね。ところが、せっかくの条例を十分に機能させていない。3万通を越える意見書、4回にわたる公聴会、そして住民説明会…。現市長は形式的な手続きだけをふみながら、勝手に合意したわけですね。
藤井私たちも全てに反対しているわけではありません。「公害道路に反対」なのです。民家から数メートルのところに巨大なトラック専用道路。せめて地下を通れないか、地下が無理ならドームで囲えないか、JR東海道線の真ん中あたりを通すことはできないのか…。しかし、計画はそのまま。一切住民の意見は反映されていません。
公害道路の出入口に
吹六小学校や保育園が…
「公害道路やめて」と訴える市民のみなさん岩根南吹田地域の方と懇談したときも同じ意見が出てました。公害道路の出入り口はトンネルになるのですが、吹六小学校や保育園があるところに、なぜわざわざ出入り口を持ってきたのか、そのまま神崎川を渡って大阪市内に出ればいいじゃないか、などですね。
有田岸田前市長は「住民のみなさんの声を背景にしてJRや国と交渉する」とおっしゃっていました。本来なら住民投票をやって、その結果を持って、国やJRと交渉すれば、「解決に向けたお互いの譲歩」が勝ち取れたのではないか、と残念です。
では次に新芦屋の私有道路問題についてですが、実情はどうなのですか?(15ページも参照して下さい)
私有道路掘り返しで
不動産会社に800万円も
私有地でも下水問題は市の責任で解決を
春田 圭子さん
いつまでも、民・民の問題と逃げていないで、ライフラインを守る責任を
春田道路というみんなが使うものが「個人の所有物」であると、様々な問題が生じます。私は戦争中からこの地域に住んでいますが、当時は地主さんが、所有する田んぼや雑木林をポツリポツリと売っておられました。ところが高度経済成長、特に万博の時期などは建築ラッシュで、次々と住宅に変わっていきました。そして売る土地がほぼなくなり、道路のみを今のS不動産に転売されたのです。この道路は、新芦屋のメーン道路で、多くの家はS不動産名義の道路に接しています。例えば、家を建て替えるとき、ガスや水道を引き込まねばなりません。その際、道路を掘らねばなりませんが、S不動産は「掘削料」として法外なお金を取っているのです。
有田いくらくらいの「掘削料金」を?
春田家の敷地面積にもよりますが、300万円から800万円。わずか1mほどの道路を掘り返すのに、ですよ。吹田市の下水普及率は99・8%らしいですが、下水が入っていない所帯のほとんどが新芦屋地域です。つまりS不動産が許可しないため、公共下水道が引き込まれず、私たちはいまだに汲み取り便所か浄化槽です。
側溝も崩れかけている
私道に開いた大きな穴。放置すれば危険なのだが…
私たちは何度も市役所へ行きました。しかし「民間と民間の問題に、市は口出しできない」とただそれだけ。もう25年間もこの状態なので、住民は高齢化し、ハッキリ言って「あきらめムード」も漂っています。しかしこの時代に下水道がないっていうのも問題でしょう?吹田市には「ライフラインを守る」という責務もあるはずです。
有田「私有地だから、当事者同士で解決を」という理屈もあるでしょうが、ライフラインの問題ですから、人権に関する問題でもあります。吹田市の姿勢が問われていますね。
岩根「民・民の問題」と片付けてしまうと、結局、力の強い者が勝つんです。この場合は所有権を持つ業者ですね。行政が公的な立場からみずからの課題としてのりだす時期が来ていると感じますね。
春田家の前の道路は穴ぼこだらけです。転んで大怪我したらどうなるの?なんて話し合ったこともあります。
岩根まずこの業者と市が話し合うことはできますね。下水道の計画など、住民の利益を守るまちづくりの問題として、主体的にとりくむ、そんな対策を取らずに、25年間も放っておいた行政の責任が大きいのではないかと思います。
どうすれば「住み良い吹田の街」になるのか
有田みなさんから様々な問題が出されました。最後に、どうしたら「住み良い吹田の街」になるのか、具体的な提案があればどうぞ。
春田吹田の隅々まで開発され尽くした、という感じです。山田や千里丘、佐井寺、千里山の緑が次々とマンションに変わってしまいました。タケノコを掘ったり、ウサギ狩りをした千里丘の自然は、もう戻らないでしょう。これ以上の緑を削らないような具体的で実効力のある条例で規制すべきではないですか。
矢沢小泉内閣が進めた規制緩和で、建築確認も民間業者ができるようになり、「耐震偽装マンション」が大問題になりましたね。業者は「法律の抜け道」を使って、自分たちが儲かるようなシステムでどんどん建てていきます。せっかく良い条例があっても、行政がそれを生かして業者を規制し、しっかりした「まちづくりビジョン」を持たないとダメです。今の吹田市の姿勢は「言葉だけ」で、具体的な行動が伴っていない。
私たちも近所に高層マンションが建ちそうだ、ということで初めて勉強しました。でも計画を知ったときはもうすでに遅いんです。業者はプロですから、住民の要望をうやむやにして計画通りに進めてくる。頼りになるのは行政ですね。子や孫の代まで「吹田に住み続けて良かった」と言える様な街にするため、「市長さん、もっと汗をかいてください」と言いたいです
現市長のハコモノ中心では「夕張」に…
開発業者が喜ぶのでなく
お年寄りや子どもが安心の待ちに
子や孫の代まで「住んで良かった」といえる街にしてほしい
(昨年のよっといで祭で)
岩根政府の規制緩和の矛盾が集中的にあらわれているのが、吹田ではないでしょうか。昨年一年間のマンション新規供給戸数は、近畿で第2位、大阪で第1位です。つまり、それだけ、今の市長が開発に甘く、開発し放題というわけです。業者の開発を止めないばかりか、自ら城山公園、水族館、とハコモノ作りを公言。これを進めたら「夕張」ですよ。幸い「吹田ブランド」というのがあるらしくて、他市に比べて、吹田は住んでみたい街だそうです。その環境を守る責任がある。少子・高齢化社会の中で、限られた予算をどう使っていくか、が問われています。吹田操車場跡地の開発に1000億円もの事業費をかけ、地下鉄今里筋線の延伸計画には500億円の費用でしょう。私は開発業者が喜ぶような予算の使い方ではなく、お年寄りや子ども達が安心してくらせるようなまちづくりに重点を置くべきだと考えます。
操車場跡地は
森林公園でいいのでは…
藤井私たちは操車場跡地の開発に反対しているわけではありません。あそこは「森林公園」などにするべきでは?地球温暖化が進んで、昨今の夏の暑さは異常ですが、緑があるところは涼しくて、コンクリートで覆われると、ヒートアイランドになる。森林公園なら、お金もかからないし、遺跡も守れる。なによりみんなの憩いの場所になるではないですか。吹田市南部は緑が少なく、喘息患者も多い地域なので、せめて操車場跡地くらいは公園でいいのでは、と思います。
有田そうですね、本日は「環境を守るための吹田市の役割」と、現在の乱開発を「どう打開するのか」について、それぞれの立場から語っていただきました。大事なことは、地域ばらばらに頑張っておられる市民の皆さんが、ネットワークでつながって、「地域の声を市政に反映させる」ことだと感じました。そして、そうした市民の運動を後押しできるような、吹田市政であってほしいと願っています。今日はどうもありがとうございました。