この滝が天然でないとは・・・
赤字必至の「水と緑の健康都市(箕面森町)」
開発のために開通させた「箕面トンネル」を探る
暑かった夏がようやく終わりを告げ、一雨ごとに秋の風情が増す今日この頃であるが、大阪の秋で有名なのが、箕面の紅葉。山が燃えるころ、大勢の観光客が訪れるのは箕面の大滝。しかしこの大滝、一部「ポンプアップした水」が流れているのをご存知だろうか?
何で?…原因は箕面の山をくりぬいた「箕面トンネル」。トンネルを掘削したことによって、箕面山から毎分7トン以上の水が、トンネルの湧水として流失し始めたのだ。一体どうなってしまったのか、早速現地へ飛んだ。
「箕面トンネル」掘削の影響で上流の川は枯れ、土壌が崩落
「このトンネルは、箕面市止々呂美地区に開発予定の『水と緑の健康都市(箕面森町)』にアクセスする道路として2007年5月に開通しました」。本日案内していただくのは箕面市議の神田たかおさん。
トンネル入り口
片道600円の通行料を支払い、箕面トンネルを抜ける。「それにしても通行台数が少ないですね。これでやっていけるのでしょうか?」「1日4500台ほどで計画し、その通行料で借金をまかなうとのことですが、実際は平均3000台ほどしか通行していないので、赤字トンネルになると考えられますね」と神田さん。その赤字分は結局税金で穴埋めするのだろう。
カルフールをはじめハイカラな箕面の町から、あっという間にトンネルを抜けると、そこには田園風景が広がる。止々呂美地区だ。奥山川をさかのぼる。ちょっとしたハイキング気分。
「ここは防火水槽になっていますが、トンネル掘削により奥山川が水枯れするということで大阪府道路公社が設置したものです」。防火水槽のすぐ下を、透き通ったきれいな水がさらさらと流れる。この水がポンプアップされた人口の水だとは。
「ここは集落の水源地です。トンネルが掘られて、奥山川が水枯れしてからは、箕面ダムから水を引っ張ってきて、ここで浄水して、集落に送り込んでいます」。
トンネルを掘った大阪府道路公社は、あらかじめ奥山川が水枯れすることを予想して、ダムの水を代替水にしたのだ。
「ポンプアップした水はここから流しています。ここから上流は見事に枯れているでしょ」神田議員の指差す上流を見ると、完全に川が枯れてしまい、水分を失った土壌が崩落して、川を埋め始めている。
「山全体の地下水が枯れ始めていて、各地で土砂崩れが始まっています。この土砂崩れについて、猪や鹿が暴れたためとの説明もあります(笑)が、原因はトンネル工事しか考えられません」。
川沿いに山をどんどん登っていく。止々呂美地区の名物はビワ。ビワの木が山の中腹に植林されているが、このトンネル掘削による土砂崩壊で、ビワの木が今にも倒れてしまいそう。
「これが第6水位モニター坑です。ここは標高305メートル。トンネル工事前は、地下水位は302メートル。つまり3メートルほど掘れば地下水が出た。工事後、水位は260メートル。つまり40メートルも地下水位が下がっているのです」
さらにこの山の中に第2名神道路が作られる計画がある。箕面トンネルに加えて、第2名神のトンネルが掘られてしまえば、一体この山の自然はどうなってしまうのだろう。
その上流は枯れ川
奥山川にポンプアップした水が流れ込んでいる
巨大トンネルがなぜ掘られたかというと、それは「箕面森町」のためである。最近テレビでコマーシャルしているので、聞いた方も多いだろう。「水と緑の健康都市」として開発が計画されたのは1997年。当時から赤字必至といわれたこの開発を、横山ノック知事、そして太田知事が強引に進めた結果、工事は止まらず、750億円もの赤字は大阪府民の税金で埋め合わされることとなった。お隣の茨木市との境界には「彩都」が、これまた赤字で苦戦しているのに、その上に約1万人もの人々がここに住居を構えてくれるだろうか?
「この止々呂美小学校、中学校は、箕面森町の開発にあわせて移転される予定です。あの道路『止々呂美東西線』は、トンネルと同時に供用開始されました」。
大型クレーンが山を切り崩している。赤字を垂れ流しながら、工事は着々と進んでいる。「箕面森町」のノボリがはためく中、工事現場の写真をパチリ。
「あれが天然記念物オオタカの生息地です。この『箕面森町』とオオタカ生息地の中間部分は、『余の川ダム』になる予定です。そうすればダム湖ができますから、『水と緑の健康都市』になるわけですね」。山の水を枯らし、オオタカの生息地を奪っておきながら、「水と緑」でもあるまい。ましてやその開発はPFI方式で、談合で有名になった大林組が行う。そして赤字になれば税金投入である。
街びらきをしたばかりの「箕面森町」。この開発のためにトンネルが掘られ、水が枯れた
「お兄さん、たこ焼きいらんか?」箕面大滝には売店が軒を並べ、アベックが滝の前で記念撮影している。ザーザーと流れる大滝の前は、夏場でも自然のクーラーでホッとする光景だ。この滝の水の20%はポンプアップされた人口の水だ、ということを観光客が知れば、どんな反応を示すだろう。もうすぐ紅葉のシーズン、人々は紅葉、猿、滝の豊かな自然を満喫するのだろうが、それがトンネルの湧水をポンプで汲み上げて補水するという馬鹿げた事態。なんとポンプアップにかかる費用年間3千万円!
箕面森町や箕面トンネルを企画し、豊かな自然を壊した上に、その穴埋めを税金で行おうとする大阪府には猛省を求めねばならないだろう。