2年ほど前、京都市の中心部に「京都国際マンガミュージアム」がオープンした。歴史ある小学校の校舎を生かし、京都市と京都精華大学の合同で開館したものだ。日本では読み捨てがあたりまえだった「マンガの本」をはじめとしたマンガを文化として収集し、研究と創作、そして楽しもういう試みで注目を集めている。
目を吹田にうつすと、千里万博公園に「大阪府立国際児童文学館」がある。みずから編集者でもあった児童文学者、鳥越信氏の12万点にのぼる絵本、マンガ、児童文学の寄贈をもとに大阪府が建てたもの。
1984年、国際児童年の5月5日こどもの日にオープンした。明治、大正時代の児童書など貴重な資料も多い。日本でもめずらしい児童文化の専門館なので出版社などからの寄贈もあいつぎ、充実した内容となっている。
ところがこの「児童文学館」、国際児童年も過ぎたのか、大阪府にとってどうでもよくなったのか、廃館の話が何度かのぼった。その都度、母親や教育者など多くの反対の声に押されて存続されてきたのである。
その「児童文学館」が今また危機にさらされている。
昨年、シャープ工場誘致のためポンと150億円出した大阪府が、今年、財政危機を名目にした橋下知事の大号令で、府民施設の廃止、縮小をかかげているからだ。
「児童文学館」は廃止して蔵書は府立図書館に移せという乱暴な考えである。
ぼくはあわてて「児童文学館」の前に立った。新緑につつまれたモダンな建物、ここをつぶして誰に売るのだろう。この建物の中には絵本をはじめ子どもたちの心を豊にする宝物がいっぱい詰まっているというのに。
吹田の北部は高度成長期にベッドタウンとして開発されたためか、意外と文化面に弱い。画廊や劇場、音楽ホールなども少ない。そんな北部にあって親子で楽しめる日本でも貴重な児童文学館。ボクは吹田遺産に登録して残してほしいのだ。
画・文 高宮信一