2010年度に入っても吹田市には、課題が山積している。地元住民の頭越しに決められようとしている国立循環器病センターの東部拠点(操車場跡地)への移転問題、吹田市民病院も移転が噂されているし、千里山駅前再開発問題では地元意見の調整に手間取り、そして梅田貨物駅移転工事が2年も延長され、JR外環状線の延長と、(仮称)西吹田駅実現についても、工期が大幅に延びるといった具合だ。
吹田市の建設事業費が大幅に伸びる一方で、「ゼロクリア大作戦」と称して、市民の福祉や暮らしに関する予算はカットされようとしている。
普通なら、このような困難な事態に直面している吹田市長は、連日地域の方々の意見を聞き、議論し、政策を立案して、吹田市民のために奮闘しているはずなのだ。さて市長はどうしていたか?
上海だ。万博を「視察」していたのだ。1回目が5月9日(日)から12日(水)。
「万博開催都市が持つ跡地利用問題等についての意見交換等をとおして吹田市と上海市浦東新区の両都市の一層の友好交流を促進するため。また本年3月2日付の同区長よりの招へいに応じるため」と、「理由」が述べられている。
おーい、ちょっと待ってくれ!万博の跡地利用で話し合うべき相手は、国や大阪府のはずだ。上海市と話し合っても「?」という反応だろう。
それでなくても、吹田市長は「エキスポランドにガンバスタジアムを」「ワールドカップ開催自治体として立候補」などと、先走りながら、取り下げたばかりだ。万博跡地利用は、市民の声を聞くべきであって、上海の区長と相談するようなことではないだろう。
2回目が6月11日(金)から14日(月)。1回目は公費70万円で視察されたようだが、2回目は自費。
「上海万博で開催されるイベント『ジャパンウィーク』において、吹田市無形文化財として登録されている『権六踊り』が山田地区、権六おどり保存会により披露されることになり、その応援のため、同保存会の会員及び同保存会を応援する市民と共に上海を訪問するものです」という「理由」のようだ。
一回目が公費で、2回目はなぜ自費なのか?その疑問は置いておくとして、短期間に2回も出張するようなことなのだろうか?
もちろん「権六踊り」は素晴らしい文化で、それが上海万博で披露されるのは、素晴らしい快挙だろう。しかし超多忙なはずの市長が、わざわざ3泊4日もかけていくことが本当に必要だったのか?
6月21日、吹田市国民健康保険課窓口には、市民が殺到していた。保険料が大幅に値上がりしたのである。高すぎる保険料を支払う市民の目に、市長の公費視察はどう写ったのだろうか?
この2回の上海万博視察を終えて、市長からの具体的な報告は、まだない。
少なくとも1回目は公費で行ったのだから、きちんとした報告書を市議会に提出すべきだろう。
「ホンマは物見遊山の万博ツアーやったんと違うの?」。そんなちまたの声が聞こえてきそうな、「上海市浦東新区訪問」だったのだ。