監査請求をしたのは10月に結成されたばかりの市民団体「橋下徹さんが元のテレビタレントに戻られることを願う大阪府民の会」(略称ハシモトドオリの会)。 WTCへの府庁舎移転や大阪都構想、教育基本条例など「強引で独裁的な」橋下知事の手法に疑問を感じた市民グループだ。 WTCビルへの庁舎移転問題の経過を辿ってみよう。まず08年8月、橋下知事がビルを視察した際、「関西再生の光が明石海峡の奥から見えた。ここしかない」と、ほぼ独断で購入&移転を決定した。しかし府議会議員や専門家などから、「耐震性に疑問がある」「防災拠点にするのは無理」「遠くて不便だ」など異論が噴出。そんな「真っ当な意見」に全く耳を貸さず、突っ走る橋下知事。 府議会における2度の移転案否決にも関わらず、知事は10年11月頃から職員の引っ越しを開始させ、現在はWTCビル(咲洲庁舎)に約2千人の府職員が引っ越しを完了させた。 そして今年3月11日、巨大地震が東日本を襲った。遥か彼方で起こった地震にも関わらず、WTCビルは長周期地振動で大揺れ。エレベータに職員が5時間も閉じこめられたり、ビル壁のひび割れ、天井パネルの落下、水道管の断裂など360カ所に及ぶ被害が出た。 この事態に知事は「当時は巨大地震を予想していなかった。予測できない事態で責任を負うなら政治は一切できない」と開き直ったのだ。 おーい、おい。そんな言い訳が通るなら「原発事故は予測できなかった。想定外だ」を繰り返す東電ソックリではないの。 今年8月、さすがに橋下知事はWTCへの全面移転を断念した。しかし2千人もの職員、来庁者、テナント営業者などの安全を考えると、早期に耐震工事を行わねばならない。その工事費は130億円もかかるといわれている。購入費約85億、職員の移転費約11億、耐震工事費(今後いくらかかるか分からない)は全て、私たち府民の血税である。 「WTCビルがほしいのなら、元のタレントに戻って自分のお金で買ってください」とハシモトドオリの会が訴える。この住民監査請求は今後、提出者たちの「意見陳述会」などを経て、大阪府監査委員が購入や移転費用の支出が適切かどうかの裁定をくだすことになる。