原発は危険だけれど、コストが一番安いのだから、日本経済発展のためには止められない。安全性を高めて再稼働すべきだ。これが東電や政府、財界など「原子力ムラ」の言い分なのだろう。
しかし「コストが一番安い」というのは真っ赤なウソ。おそらく原発が最も高くつく発電方法である。以下検証してみよう。
よく出てくる原発の発電単価は、1キロワット時5・9円という数字。これは経産省・資源エネルギー庁が出したもので、電力会社が計算したものではない。
この資源エネ庁の数字は、経産省があるモデルを建てて机上の上で計算したもの。しかし大事なのは「実際にいくらかかって電気を作ったのか?」ということ。
立命館大学の大島堅一教授が、電力会社の有価証券報告書を元に、各電源ごとの単価をはじき出した。
その方法は㈰燃料などの発電に関わる費用と、㈪その処理にかかるバックエンド費用を足した額。
集計すれば、原子力が8・64円、火力は9・80円、水力が7・08円となり、原子力はそれほど安くないことが判明した。
しかし、この表には「隠された真実」が潜んでいる。それは揚水発電だ。
原発は一度動かすと、フル回転させなければならないので、電気が余る夜も100%稼働である。
電気は貯めておくことができないので、かならず原発のそばには揚水発電所を作らねばならない。
下の池と上の池を作っておいて、電気が余る夜に、下から上へ水をくみ上げておき、必要になる昼間に、水を落として発電する。
原発と揚水発電はセットなので、そのコストは原発に算入しなければならないが、政府や電力会社は今まで水力に加えていたのだ。
よって本来のコストは、原発+揚水で10・13円、一般水力は3・88円となり、自然エネルギーである水力がかなりの差で安価となる。
さらに考慮すべきは、原発につぎ込まれてきた税金である。
当然、立地自治体につぎ込まれた巨額の税金もコストに算入されねばならない。
実は税金を含めた本当の原発コストは、原子力+揚水が12・23円、火力が9・90円、一般水力は3・98円となり、圧倒的に原発が高いのである。
もう1つ考慮すべきコストがある。それは事故による賠償金。福島の土地を除染する費用、農業や漁業への補償、健康被害や風評被害への補償…。これらは天文学的数字に跳ね上がるので、今や世界の投資家は原発には投資せず(事故が起きれば投資金は返って来なくなる)、太陽光に切り替え始めているのだ。
さらに言えば、この中には核燃料サイクル費用は含まれていない。六ヶ所村、もんじゅの費用などを考えると、「原発を続ければ、日本は経済破綻」してしまいかねないのが本当の姿なのだ。