「橋下さん、96億円かえして」という横断幕を持ち、大阪地方裁判所へ入場しようとしているのは、「WTCビルの購入と庁舎移転で費やされた巨額の税金を、橋下前知事から取り戻す会」(以下WTC訴訟の会と略)の原告団。
橋下市長はよく「2重行政を解消する」というが、彼自身の失政によって大阪府は「2重庁舎」になった。大手前と咲洲に分かれたため、今後30年で約1300億円もの無駄な経費がかさむ。さらにWTCビルを今後も使おうとするなら、耐震工事は130億円もかかるという報道まである。
さらに地震学の専門家は、南海・東南海地震が来れば、咲洲自体が陸の孤島になる、と警告する。咲洲は埋め立てて作られた人工島なので、陸側につながるトンネルや電気ケーブル、水道管は破断するとの予想だ。もちろん液状化の懸念もある。
橋下前知事が、WTCビルに庁舎を全面移転しようとしたとき、大阪府議会は2度に渡って移転条例を否決した。にもかかわらず前知事は約2千人に上る職員の移転を強行した。橋下氏が知事に当選したのは、確かに「民意」である。しかし大阪府議会議員も「民意」によって当選している。知事が移転を提案し、議会が否決したということは、この時点で「民意」が分かれていたことになる。
そんなときはどうするか?——継続審議が普通なのだ。つまり議会の中に「庁舎移転に関する特別委員会」などを設置し、十分に議論するべきだった。もしそうしていれば…。その間に311震災が起きたので、「WTCビルは使い物にならない」ことが事実として判明した。つまり、あのビルを買わずに済んだ。