原発は地震が来たら壊れてしまう、ということは分かったけど、すぐに止めたら停電すると言われているし、火力発電に切り替えたら、CO2が出てしまう…。などと不安になっている方、だまされないようにしよう。「原発は地球温暖化の切り札」でもなんでもなく、むしろ「地球を温め続ける厄介な発電所」なのだ。以下、検証してみよう。
図1は福井県の原発銀座から出る温排水で、若狭湾が温められている様子。原発は火力発電より熱効率が悪く、出てくるエネルギーの3分の1しか電気にならない。残りの3分の2は熱になってしまう。つまり原発を運転すれば原子炉が熱を持つので、炉を冷やし続けねばならない。今回のフクシマ事故で明らかになったように、原子炉を海水で冷やす必要があるので、日本の全ての原発は海岸に建っている。
原発は「海温め装置」なのだ。CO2削減の目的は地球温暖化防止のはず。「発電時にはCO2を出しません」とくどいほどCMで宣伝していた原発だが、実態は海を温めることで海中にとけ込んだCO2を蒸発させているし、「温暖化防止の切り札」といいながら、海を温めている=「温暖化を加速させている」発電所だったわけである。
燃料となるウランを採掘する時には、石油を燃やして重機を動かすので、CO2が出ているし、そのウランを濃縮する際にもCO2が出る。
それだけではない。原発を運転すると必ず出てくるのが使用済み核燃料棒。いわゆる核のゴミ=死の灰である。今回の事故で明らかになったように、この使用済み核燃料棒は、放置すれば崩壊熱を出し、メルトダウンするので、原子炉建て屋の中の「使用済み燃料プール」で冷却し続けねばならない。
その期間は?
3年から5年。
3年から5年、冷却した使用済み核燃料棒はどこへ行くか?
青森県の六ヶ所村。ここでプルトニウムだけを取り出し、残りをガラスと混ぜて「ガラス固化体」にして冷やす。ちなみにこのガラス固化体、半径2メートル以内に近づくと、人は死ぬ。それほど高い放射能を出している危険物質である。さて、ガラス固化体を六ヶ所村で何年冷やすか?
約50年と言われている。
六ヶ所村はあくまで再処理工場と中間貯蔵なので、50年間冷やしたガラス固化体は、いよいよ「最終処分場」へ送られることになる。しかし…。
日本には、まだその受け入れを決めた自治体はない。北海道の幌延町などで「地層処分の研究」をしているようだが、あくまで研究なので、受け入れ先ではない。
モンゴルの砂漠の下に埋めたらどうか、という案も出たようだが、当然モンゴルに反対運動が巻き起こり、そもそも自国の核のゴミは自国で処分するのが世界の原理原則。よって、モンゴル案はダメになった。
仮に国内で最終処分場が決まったとする。地下300mから1㌔の穴を掘って、そこに保存するのだが、さてこの高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)、完全に無害になるには何年かかるか?
10万年から100万年と言われている。
ちなみに10万年前の地球にはネアンデルタール人がいた。その頃に仮に原発があったとして、埋められた核のゴミが、今ようやく無害になるという計算だ。
人類の到達した現代科学を持ってしても「核のゴミ=死の灰の処分方法は、まだ未確立」である。そうすると解決策は?
今すぐ原発を止めて、核のゴミをこれ以上出さないこと、である。
日本政府と電力会社は、「もんじゅ」と「再処理工場」をメーンにする「核燃料サイクル」に、いまだにこだわり続けているが、すでにこのサイクルは破綻している。いますぐあきらめて、このために積み立ててきた2兆数千億に上る基金を、福島の被災者への賠償に回すべきだ。原発先進国といわれるフランスも米国も、とっくに核燃料サイクルはあきらめている。
最後に「原発を止めたら停電する?」と関西電力が脅迫しているが、これも真っ赤なウソ。図(4)は、08年度、発電施設と量の実績。原発を優先的に稼働させていたため、火力、水力、自家発電にはまだ余裕がある。仮に原発の電力(青の部分)を全て火力に移行させたとしても、まだ余裕があるのだ。
もちろん、火力発電もCO2を出すので、長期的には風力、太陽光などの自然エネルギーに転換するべきだ。しかしその移行期間は、天然ガスなどを使った火力発電などで十分まかなえる。まして今後の日本は少子高齢化、人口減少、省エネ家電の普及などで、電力需要は下がっていくだろう。
「この冬も節電をお願いします」。テレビや新聞を使って、危機感をあおっているのはなぜか?
それは「原発を止めたら停電しますよ」という根拠のない脅迫なのだ。
原発はCO2を出さない、原発を止めたら停電する、どちらも悪質なウソである。だまされないようにしよう。