市長後援企業に工事、入札せず発注。昨年10月末、毎日新聞に大見出しが打たれ、吹田市は騒然となった。吹田市役所の屋上に設置された太陽光パネル。本来なら競争入札するべきところを、井上市長の後援会を25年も続けている「後援企業」に、「単独随意契約」で発注していたのだ。えっ、それって世間を騒がせた「政治と金」の問題と違うの?事件の概要を振り返ってみよう。
問題の「後援企業」は、吹田市元町に本社を置く摂津電気工事(株)。市役所低層棟屋上の「太陽光パネル設置工事」を、2012年2月末に2251万円で受注。本来130万円を超える工事は、入札で決めなければならないのに、この企業だけの「単独随意契約」だった。
問題の工事は、国が進める「グリーンニューディール基金」によるもので、吹田市は環境省から、あらかじめ2年間で5854万円の予算をつけてもらっていた。 このお金で「CO2の削減、省エネに関わる事業を行ってください」ということで、吹田市は(1)市役所本庁舎内の電灯をLED化する。(2)市役所本庁舎に断熱フィルムを貼付する。(3)市役所本庁舎仮設棟に高遮熱性塗装を施す、という3事業を行った。
この3事業は当然入札で行われたのだが、驚くことに全ての入札が、非常に低価格で落札したのだ。
例えば(1)LED化については、1千9百万円の予定価格に対して、778万円と落札率約40%、(2)断熱フィルムについては、740万円に対して198万円で約26%、(3)高遮熱塗装は、307万円に対して70万円と約22%。
通常はこれほど低い額で落札した場合、「低入札価格調査」といって、手抜き工事や下請けイジメを警戒して、「本当にこの価格でやれるのか?」と調査をするものだが、吹田市はこの調査を行わず、そのまま工事をさせた。その結果約2千万円の、「入札差金」が生じ、民間事業への助成金残額400万円をプラスして2497万9千円の金が浮いたのだ。
この3事業について、あらかじめ予定価格を決める時に1社に見積もりを取らせて、入札にかけたのだが、入札後に、吹田市は「3社程度の見積が必要」と感じたので別の業者に頼んで、見積書を作成し、「3社見積もりしていたかのように」偽装していることも明らかとなった。
疑惑の第一点目は入札差金、つまり「グリーンニューディール基金が余るように」仕組んだのではないかということだ。
そして事件の核心、「太陽光パネル設置工事」である。何と基金の残金2497万円を利用して、摂津電気が2251万円で単独随意契約したのだ。2千万円を超える工事を、入札せずに随意契約で、しかもその見積書は、何の積算根拠も示さない、金額だけの一枚もの。これでは、残額が先にあって、「その額に合わせて工事費を決めた」と疑われても仕方がない。
さらに注目してほしいのは、内訳書の日付。疑惑発覚後の11月27日に、「後追い」で提出されているのだ。
2千万円を超える「太陽光パネル設置事業」である。当然、工事の前に「パネル単価がいくらなのか?」「工事日数はどれくらいを予定しているのか?」などを積算した上で工事費を計上すべきだ。疑惑は深まるばかりだ。