5月15日午前10時、マスコミ各社のカメラフラッシュが一斉にたかれる中、住民監査請求書が吹田市監査委員会に提出された。昨年吹田市が単独で随意契約をした約2250万円の太陽光パネル設置工事は、違法で不当な公金支出に当たるのでその金額を返還せよという監査請求だ。2千万円を超える工事が単独で、しかも井上哲也吹田市長の後援会の中心メンバーである企業に、随意契約で発注されたのだ。これは典型的な汚職事件ではないのか?「疑惑の真相を明らかにしてほしい」「市長は責任を取るべきだ」。監査請求書を提出するに至った、住民たちの闘いをレポートする。
5月14日「井上市長2600万円返して!吹田の会」が結成された
こちらが監査請求書と、550名の請求人が自署した委任状です。公金が無駄にならないよう厳正に監査してください」。請求代理人である徳井義幸弁護士が、分厚い書類一式を、岡本監査事務局長に手渡す。署名集めを開始したのがゴールデンウィークだったので、わずか10日間で500名を超える請求人が集まったのだ。この問題への市民の関心の高さを物語っている。
では今回の「疑惑事件」の概要をおさらいしてみよう。
吹田市は「グリーンニューディール基金」(以下「GN基金」)として、あらかじめ環境省から5854万円の予算をゲットしていた。→この予算でCO2削減事業に取り組んだが、約2500万円の予算が余った。→2012年3月、余った予算を使い切るため、井上吹田市長の後援企業である「摂津電気(株)」に2251万円もの「本庁舎太陽光パネル設置工事」を、入札をかけずに発注した。→これは「汚職に近い事件」ではないか、と吹田市議会やマスコミが追求をはじめた。
以上が、一連の疑惑事件の流れである。井上吹田市長は、維新の会の顧問であったが、この事件が明るみになって、顧問を辞任。その後の市議会では、「全て部下がやったことで私は知らなかった」と答弁。議会に100条委員会が設置されて、現在も真相究明のための審議が続いている。
井上吹田市長は、「吹田市の財政が非常事態だ」と言いながら、高齢者のはり・きゅうマッサージ助成の削減や、福祉バス「きぼう」号の廃止、国民健康保険の引き上げ、保育園や幼稚園の統廃合、民営化計画など、市民生活に関わる予算をバッサリと切り捨ててきた。
もしこの疑惑事件に市長が関わっていたのなら、一方で予算がないと市民に痛みを強いておきながら、自分は「お手盛り」で、後援会の幹部企業に2千万を超える税金をポンとプレゼントしたことになる。
さすがに、これには吹田市民が怒りを表明。今回の住民監査請求につながった。
住民監査請求書がまず指摘するのは、(1)GN基金は12年3月に終了するのではなく、13年3月まで延長できた。吹田市が延長の手続きを取っていれば、「時間がない」と単独で随意契約しなくても、競争入札で工事を発注できたはずだ。(2)仮に1 年延長が認められなかったとする。吹田市は「緊急の必要により競争入札できなかった」としているが、法律で「緊急」とするのは、「地震などの災害で橋や道路が壊れた。復旧しなければ生活できない」というような場合である。「3月末で予算を使い切らなければ」というのは「緊急」に当たらない。余剰金は国に返還すべきだった。(3)なぜ摂津電気なのか?太陽光パネル設置工事の専門業者でもないところに、なぜ単独で契約したのか?(4)百歩譲って、太陽光パネル設置工事がどうしても必要だったとしても、2251万円の工事費は高すぎる。請求人が中堅ゼネコンで太陽光パネル設置業に詳しい企業に試算してもらったら、約1091万円。摂津電気(株)の見積が不当に高額で、差し引き約1160万円もの利得が生じている。(5)吹田市はこの疑惑が明らかになった後、慌てて「ガバナンス推進委員会」を設置。4名の弁護士をアドバイザーとして雇用した。その報酬が約320万円。これはこの事件を起こさなかったら、必要のない経費である。(6)同じく、この工事価格の妥当性を調査するため、Uコンサルタントに明細書を作らせた。この調査費約48万円も、不要な税金の支出になる。
以上の点から主位的請求として、1-(1)井上市長、富田元副市長、摂津電気(株)などに対して、工事費用2251万2千円を返還せよ。1-(2)井上市長、富田元副市長などは、368万9777円を返還せよ。という内容となっている。さらに、1-(1)の予備的請求として、太陽光パネル工事が必要であったとしても、不当に高額な金額だったので、その差額1160万925円を返還せよ、と迫っている。
住民監査請求書が提出されたのは5月15日だ。その後、この請求書は受理されたので、60日以内に結果が出てくる。もちろん、その間も吹田市議会100条委員会は、真相追及の手を緩めず、市長や元副市長、摂津電気(株)の責任を追及するだろう。おりしも橋下大阪市長の「慰安婦は必要だった」などの「暴言」によって、維新の人気が急降下している。井上吹田市長は、その維新の会の創設メンバーで、先の市長選挙では橋下市長とのツーショットポスターが吹田市の街角に貼られていた。「古い政治をグレートリセット」「統治機構を変える」と言いながら、この疑惑が汚職だとすると、井上市長は「一番古いタイプの政治家」ということにならないか?
監査結果に注目が集まっている。
【写真上】
市役所本庁舎屋上に設置された太陽光パネル。このパネル、本当に2250万円もするのだろうか…
【写真左】
「すべては部下がやったこと…」井上吹田市長の釈明には?が…
市長の「お手盛り」で後援会幹部企業に
2000万円を超える税金をプレゼント