出席者
吹田市非常勤職員 雇い止め撤回裁判 原告・藤井 雅子さん
吹田市職員労働組合執行委員長・丹羽野 和夫さん
岩根 今回は新春特別企画ということで、私たち3人が「どうなる2013年、吹田の未来」と題して話し合うことになりました。まずは総選挙の結果、安倍内閣が成立しましたが、あらためて小選挙区という選挙制度に問題ありと感じました。自民党は得票数を減らしながらも議席を294も獲得したのですから。
磯野 比例区で200万以上の票を減らしながらの「大勝利」ですからね。自民党が支持されたわけではないが、民主党がそれ以上にひどかった。国民は民主党に愛想をつかせ、かといって維新などの第3極も信用できず、結局は小選挙区比例代表並立制という、選挙制度の矛盾が引き起こした「大勝利」だったわけです。
西谷 維新が獲得した54議席というのは、微妙な数字です。勝ったのか負けたのか?当初100議席を越えるのでは?との観測もありましたが、橋下氏が石原氏と組んでから、急速に風が止まったようです。
原発やTPPなど重要な政策で、東京と大阪であれだけ意見が違えば、底が見えたというか…。
岩根 確かに全国的にはそれほど伸びませんでしたが、近畿ブロック、特に大阪では維新が第一党です。
合理化という名の解雇がまかり通るなかで
丹羽野 今回のゲストは、吹田市総合福祉会館で25年間非常勤職員として働いてこられた藤井雅子さんです。実は、藤井さんは昨年秋に吹田市から一方的に雇用を打ち切られ、それを不服として裁判で職場復帰を求めています。昨今のデフレ不況の中、世間では派遣や非正規雇用の労働者だけではなく、正規社員までがリストラ、合理化という名の解雇がまかり通っています。あまりにも労働者に厳しい状況が続く中、先日はマツダの派遣切りが違法であると、労働者側が勝利する画期的な判決も出ました。藤井さんの場合、吹田市では初めての「雇い止め」という形で、解雇されましたね。この裁判は、全国の自治体で働く非常勤職員さんの「雇い止め」を二度と許さない、重要な闘いになると思います。まずは、なぜこのような事態になったのか、経過を教えてください。
一方的な雇用打ち切り「青天の霹靂」でした
藤井 1987年4月に吹田市の総合福祉会館がオープンしましたが、私はその1ヶ月後に非常勤職員として採用されました。つまり25年と4ヶ月、吹田市で働いてきたことになります。私たち非常勤職員は、実態としてはずっと吹田市に雇用され、勤務してきたのですが、形式的には、毎年4月1日に「委嘱状」をもらって、1年ごとの雇用形態となっています。総合福祉会館がオープンしたとき、筆記試験と面接を受けて採用された私たちは、当時から「本来なら正規職員として雇用したいのだが、財政的事情でやむなく非常勤として雇用せざるを得なかった」と正規職員に準ずる形で、継続雇用を前提にした採用だったのです。それなのに、昨年3月末、いきなり「9月末で雇用契約を打ち切る」と言われた時は、まさに青天の霹靂でした。
藤井 1987年4月に吹田市の総合福祉会館がオープンしましたが、私はその1ヶ月後に非常勤職員として採用されました。つまり25年と4ヶ月、吹田市で働いてきたことになります。私たち非常勤職員は、実態としてはずっと吹田市に雇用され、勤務してきたのですが、形式的には、毎年4月1日に「委嘱状」をもらって、1年ごとの雇用形態となっています。総合福祉会館がオープンしたとき、筆記試験と面接を受けて採用された私たちは、当時から「本来なら正規職員として雇用したいのだが、財政的事情でやむなく非常勤として雇用せざるを得なかった」と正規職員に準ずる形で、継続雇用を前提にした採用だったのです。それなのに、昨年3月末、いきなり「9月末で雇用契約を打ち切る」と言われた時は、まさに青天の霹靂でした。
丹羽野 藤井さんたちの障がい者生活介護事業が民間業者に委託されて、仕事を奪われた形になったのですね。
営利を追求しない直営
だからできる支援なのに
藤井 利用者の多くが医療的なケアやリハビリが必要な重度障がい者の通所事業を、ずっと吹田市直営で行ってきました。利用者の中には胃ろうやインシュリン注射や痰の吸引、カテーテルなどが必要な人もおられますので、看護師や専門的知識のあるスタッフが現場を見ていないとダメなのです。最近では進行性難病、高次脳機能障がいなど人生の途中で受傷されてさまざまな困難を抱えておられる方など一人一人の支援のあり方も違います。利用者の立場に立てば、営利を追求しない直営だからこそできるサービスだと思うのですが、吹田市は利用者や家族の不安の声があるにもかかわらず、昨年10月に、強引に民営化してしまったのです。
丹羽野 口では民間活力と言いながら、実際には経費削減。それも障がい者や高齢者、子育て など市民生活に関わる予算をどんどん削っていく、そんな吹田市政に問題があります。それで、実際に民間委託され、藤井さんたちの職場はどうなったのですか?
障がい者をささえる施設もスタッフも足りない
藤井 直営の時は正規職員4名、非常勤2名、アルバイト3名の体制で仕事を回していたのですが、引き継ぎ期間も実質1か月しかなくて、民間になって当初は6名ぐらいで対応しようとされたようです。引き継ぐスタッフも引き継がれる民間事業所のスタッフも一生懸命なのに、時間がなくて大変な状況でした。利用者からは「リハビリなど、これまで通りにしてもらえるのか」と、不安の声が出ていました。重度障がい者の場合、気持ちがわかりにくかったり、容態が急変する場合があるので、本当は利用者の状況をトータルに把握した経験ある職員が必要なのですが…。問題なのは、医療・リハビリ・入浴サービスのできる障がい者施設もスタッフも不足していることです。
丹羽野 吹田市はこれまでも事業を民間に委託する場合、そこで働いていた非常勤職員を雇い止めにせず、他の部署に配置転換することで雇用者責任を守ってきました。藤井さんたちのケースを許してしまうと、今後も「ルールなき解雇」がまかり通ってしまいます。
藤井 吹田市にはすでに非常勤職員が609人、臨時雇用員が1436人もいて全体の42%を占めています。そしてほとんど全ての人が、1年ではなく、継続的に雇用されてきたのです。私たちの「雇い止め」を許してしまえば、その他の非正規雇用の方々も安心して働き続けることができなくなってしまいます。
丹羽野 昨年9月末でいきなり失業者になってしまったわけですね。現在の生活は?
藤井 私が民間企業に勤める労働者なら、今回の雇い止めは絶対に認められるはずのない不合理なものです。でも、吹田市は、私が非常勤の公務員だからという理由だけで、私の生活や仕事に対する誇りも無視して雇い止めをしたのです。20年以上も継続して働いてきたのに、民間でも認められない形で、簡単にクビにできるって、どう考えてもおかしいと思います。
「官製ワーキングプア」の方々の権利を守るためにも
丹羽野 世間ではようやく「官製ワーキングプア」という言葉が認知されてきましたが、民間でも官公庁でも非正規雇用が増えています。吹田市でも学童保育、児童館、図書館など多くの職場で、非正規雇用労働者が低賃金で労働条件も不十分な中、市民サービスをギリギリのところで守っています。こんな理不尽な解雇を許すわけにはいきません。今後の裁判予定は?
藤井 5月22日に大阪地裁で原告として陳述を行い、裁判が始まりました。次は7月17日午前10時から開かれます。原告は私と、同じように雇い止めされた福田廣子さん。被告は吹田市になります。多くの市民に、この解雇の不当性を知っていただくために、リーフレット宣伝と署名に取り組んでいます。
丹羽野 民間労働者も公務員も手を取り合って、不当なリストラに対して闘っていくことが必要ですね。この裁判は、全国の「官製ワーキングプア」の方々の権利を守る闘いでもあります。最後まで粘って粘り抜いて、勝利しましょうね。今日はどうもありがとうございました。