8月、大阪地方裁判所に提訴
吹田市が2012年3月に行った市役所本庁舎屋上の「太陽光パネル設置工事疑惑」について、とうとう住民訴訟が始まった。「2千万を超える工事なのに、井上市長の後援企業である摂津電気㈱が、単独随意契約で受注したのはなぜか。我々の試算では約1千万の工事に、その倍以上の約2500万円もの工事費がなぜ必要だったのか。こういった疑惑を解明するつもりです」。原告側弁護団長の徳井義行弁護士は提訴後の記者会見で、今後の裁判の抱負を述べた。ここでは今一度、この疑惑の真相に迫っていきたい。
市役所屋上に設置された問題の太陽光パネル 角度をつける必要も、基礎設置も必要なかった。
まずは写真①をご覧いただきたい。本庁舎屋上に設置された太陽光パネルの枚数は80枚で、三菱電機の多結晶タイプ。ちなみに現在は単結晶タイプが使われる場合が多く、多結晶タイプは、昨年の工事時点でもかなり値崩れしていたとのこと。単価は1枚8万6400円、合計で691万2000円です。この単価について当時の世間相場と比較してどうだったのか、裁判での審理を待ちたい。
データ①は、2012年3月市議会の議事録。
榎内市議が「…<略>市役所低層棟の上につけるのは15kwで、約2500万円ということですけれども、1kw当たり良いものをつけて70万円ということで70万円掛ける15 にしたら、もうこの数字にならないのですけれども、これはどういうことでしょうか(後略)」と、今回の工事費が相場より1千万円以上も高くなっている点について質問。
当局の答えは「…<略>太陽光パネルを設置した際に、ある程度の角度を南向きにつけなければ発電効率が上がりません。その角度をつけるためには風の影響を受けます。角度をつければつけるほど、基礎をしっかりとしなければいけないということで、非常に重量のある基礎を設置する必要があります。(中略)また、モニタリングパネルを目立つところに置いて啓発もかねるとそういうシステムの経費も当然入ってくると思いますので、一般家庭よりも相当高くなるものと理解しております」だった。
ここで写真①をあらためて見てほしい。市役所庁舎にはすでに明かりとり窓のために東南方向に傾斜斜面があり、パネルはそこに敷き詰めたのだ。従って基礎を打つ必要もなく、パネルを載せる大型の特殊架台も必要ない。
データ②は、摂津電気が工事後(普通は工事前に出すものだ!)半年以上の歳月を経て提出したもの。この内訳書に、太陽光取り付け用防水架台及び上部取付架台として1式255万2000円が計上されている。250万円の工事が「一式」で計上されていたので、この「一式」の内訳を吹田市に情報公開請求したところ「文書不本在」だった。実際の取り付け現場には、角度を取り付ける必要もなく、基礎を打つこともなく、わずか10センチ程度の架台を斜面に載せただけだった。
なぜ「摂津電気工事(株)」は白ヌキパソコン文字なのか?この写真は「加工」されたものではないのか?
さらに不思議なのは写真②である。これは、工事完了届に添付された工事中の写真。「工事名、工種、位置」などを書き込んだ黒板が写っているが、不思議なことに、工事日付がなくて、工事名はパソコン文字の白抜き。工種、位置は手書きなのに、「摂津電気(株)」の名前はパソコン白抜きなのだ。そもそも、工事写真は「工事名、工種、位置、撮影月日、略図、施工業者」の5項目を表示して提出するもの。「この写真のネガ、デジカメ撮影なら元データ」を吹田市に情報公開請求したが、これも文書不存在だった。
42インチのモニターTV。1台で28万円ナリ。
写真③は市役所玄関ロビーに設置されたモニターテレビ。42インチのテレビが内訳書では28万円。現在の42インチTV市価は平均で7万円程度なので、4倍も高いテレビが市役所に納品されている。
内訳書にはデータ収集装置として「PCデスクトップ17インチ液晶」とある。この値段は、何と1台で105万円。このご時世で、いったいどこに1台105万円もするパソコンがあるのだろうか?さらに不思議なのは計測表示盤。モニターTVで数値を表示するのだから、計測表示盤は、誰に何を表示しているのか?この表示盤35万円を含めて、この工事費が妥当なものだったか、裁判で明らかにしてほしいものだ。
吹田市の井上市長は大阪維新の会の元顧問である。この疑惑が発覚し、維新の会を離党されたようだが、その政治方針は「徹底したコストカット」だ。「行政の維新プロジェクト」と題して、お年寄りの福祉バス廃止、はり・鍼灸の助成金カット、市立保育園の民間への売却、幼保一元化などが強行されようとしている。「予算がない」と、市民サービスをバッサリ切り捨てておきながら、自分の後援企業には「汚職に近い大盤振る舞い」をしていたのだ。
この裁判の行方が注目される。