疑惑の渦中にいる井上哲也吹田市長
摂津電気工事㈱ビル、市役所屋上に設置された問題の太陽光パネル
5月28日(水)、大阪地裁で「吹田市太陽光パネル工事に関わる損害賠償など請求事件(住民訴訟)」の第5回口頭弁論が行われ、原告(住民)側代理人から、21ページに渡る準備書面が提出された。(写真①)
準備書面によると原告側の調査によって、かなりの事実関係が次々と判明。被告の吹田市長、吹田市幹部職員の証言があいまいなまま、着々と事実を積み上げ、追及の手を緩めない原告側の攻勢が続いている。
問題の太陽光パネル工事は、国が支給した「中核市・特例市グリーンニューディール基金」に残金が生じたため、吹田市が「残額に合わせるように」急きょ行った事業である。
◆2月8日〜12日
2012年(平成24)2月8日の時点で約2100万円の基金残額が生じていた吹田市は、翌日の2月9日に吹田市環境部、総務部、都市整備部の職員が会議を行い、「富田副市長が了解している」「吹田市の方針だ」と、太陽光パネル工事の仕様書を作成した。
市役所本庁舎の屋上にパネルを敷く工事だから、本来は「工事請負費」で執行するはずだが、吹田市は「修繕料」で工事を執行。なぜ「修繕料」で工事を行ったのだろうか?それは「工事請負費」であれば、吹田市工事検査室の監査を受けなければならず、「修繕料」なら第3者の目を通さずに済んだからだろう。この時点で民間への助成基金400万円が余ったので、基金の残額は合計2497万9千円となった
◆2月13日〜15日
2月13日から15日にかけて、吹田市は慌ただしく協議を進めていく。環境部、総務部、都市整備部の3部の打ち合わせ会議に、摂津電気が入り込んでいる。そこで裁判では、①「なぜこの時点で摂津電気が協議対象者になったのか?具体的な事実経過を明らかにせよ」と被告(吹田市)に迫っている。
さらに協議記録によると、「三菱製の太陽光パネルを仮押さえしている」と業者が発言しているので、②「摂津電気は2月15日の時点で三菱製のパネルを仮押さえしていたのか否か、仮押さえは吹田市の要請によるものか否か」③「仮にこの時点で仮押さえしていないのであれば、いつの時点で仮押さえしたのか。また現場調査はいつ実施したのか」について問い正している。
◆2月20日〜3月5日
総務部は3月末までに工事完了するためには、入札では無理、として2月20日に単独随意交渉の起案を作成。予算額は基金の残額そのままの2497万9千円だった。そこで原告は、④「摂津電気との単独随意契約交渉の起案を作成
するに至った具体的経過を明らかにせよ。2月13日の協議開始以降、20日までの具体的経過である」と、事実経過の解明を求めている。
ちなみにその3日後の23日、環境部長は議会に対し、太陽光パネル工事の実施を報告するも、それが単独随意契約であることは報告していない。
そして24日、市長への決裁が終わり、予定価格が決定。摂津電気は総額2144万円のみが記入されたA4ペラ一枚の見積書を提出(写真②)。総務部長は契約相手を摂津電気に選定。3月5日、見積もり合わせもせずに、ずさんな手書き見積書で2千万円を超える工事請負契約が締結された。
内容も見ずにハンコを押した?
井上吹田市長はこの契約書の決済について、「内容も確認せず、副市長や部長に説明も求めず、ただハンコをついた」と述べている。
吹田市業者登録名簿によると、電気工事に関して、摂津電気と同等の業者は28社もある。太陽光パネル設置工事に関しても、6つの業者が公共工事の実績を持っている。そして肝心の摂津電気は、太陽光パネル工事の専門業者ではない。
太陽光パネル設置工事は近年、工事単価が下がってきている。問題の工事があった2012年当時の工事単価は、国家戦略室の「エネルギー・環境会議コスト等検証委員会」によれば、1kwあたり35〜55万円。資源エネルギー庁の試算でも58万円であった。吹田市はこの工事の概算を1KWあたり130万円で計算している。当時の市場価格の常識からは異常に高い金額で、入札もせずに契約を結んでいる。
吹田市議会100条委員会は、独自に鑑定を行って、この工事は約1400万円程度で出来たはずだという結論を下した。少なくとも800万円は不当不正に税金を浪費し、市長の後援企業である摂津電気に便宜を図ったとの結論である。市議会が800万円を返還せよ、と迫っているのだが、井上市長は「私は公明正大である」と800万円の返還に応じていない。
本来、基金が余ったなら、それは国に返還すべきであった。吹田市は3月末までに工事を行うことで、井上市長の後援企業が利益を得るようにして基金を使い切った。それが地方税であっても国税でも、貴重な血税であることに変わりはない。裁判で原告側は、「こうした不正不当な単独随意契約は、違法であり無効である」と断罪している。次回口頭弁論は7月11日。被告の吹田市がどのように「反論」するのか、注目される。